2011-01-01から1年間の記事一覧

〈残酷童話〉『人魚姫』の舞台

9/14(水)の夜は、上野の東京文化会館小ホールにて、笠松泰洋作曲・指揮のモノオペラ『人魚姫』を鑑賞した。『音楽×空間』シリーズのVol.3にあたる。モノオペラとは、一人芝居のオペラ版のことだそうで、なるほど250歳の老人魚が、少女時代の王子との悲恋の…

寄席はよせ?

昨日は、東京新宿末廣亭に赴く。落語愛好会のお誘いであった。たまたま東京駅で会長のS氏と遭遇、同じ総武線快速に乗っていたとのこと。そのまま同行して、地下鉄で新宿三丁目駅に降り立ち、末廣亭に直行。10月中席昼の部があと2人で終わるタイミング、躊躇…

セレンディピティ(serendipity)について

長く英和辞典の編集に関わっている知己のO氏に、「serendipity」について調べていただいた。こちらの責任で整理すると、以下の通り。『American Heritage College Dictionary 4 2002(アメリカン・ヘリテッジ辞典大学版:米国の、正統派を自認する辞典)』に…

アブダクション(abduction)について

パース(Peirce)の著作は、昔中公『世界の名著48』所収「論文集」中の「現代論理学の課題」を読んだのみであるが、1972〜73年ハーバート大学哲学科客員研究員であった故米盛裕二氏の『アブダクション・仮説と発見の論理』(勁草書房)での、パースの「アブ…

レニ・リーフェンシュタール(Reni Riefenstahl)

昨晩9/9(金)、NHKBSプレミアムの「BS歴史館」で、ナチ政権下で完璧に「美しい」記録映画を撮った、女性監督、レニ・リーフェンシュタールをとり上げていた。昔たしか渋谷のPARCOで、アフリカのヌバ族を撮った写真でその名を知ってから、LDで『意志の勝利』…

新司法試験合格者数

(法務省:2011年5月) 本年度の新司法試験合格者発表が、いよいよ明日午後4時と迫った。受験した人は、どれだけの合格者数になるのか気をもんでいることだろう。昨年は、受験者数8163名、短答式合格者数5773名、最終合格者数2074名だった。今年は、受験者…

官僚の働かせかた

(わが所蔵の、白水社版『ニーチェ全集』&『ルソー全集』) 佐伯啓思京都大学教授の『現代文明論講義』(ちくま新書)は、ニーチェを援用して、現代文明は、統一の崩落、目的の崩落、真理の崩落した、ニヒリズムを特質としているとし、そういう世界での、道…

熊野を想う

台風により、熊野古道の参詣道が寸断され、熊野那智大社の本殿の一部が土砂で埋まってしまったそうである。南紀を中心に、この台風の被害は甚大であるようだ。「被災された方々に、お見舞い申し上げます。」 熊野の地を訪れたのは一度だけであるが、深い印象…

「ピナ・バウシュ&ヴッパタール舞踊団」

今年になって「日本文化財団」からの公演案内のチラシが送られてこないので、いよいよこちらの懐具合がお見通しになったのかと〈諦念〉していたところ、この3月に活動休止・解散していたことを、不覚にもいまごろ知った次第。「日本文化財団」招聘による欧…

三つの木琴の音

(「森の木琴」自然の音)(三村奈々恵さんの、情熱を秘めたマリンバの音) ⦅ピアノの小曽根真(Makoto Ozone)とコラボする、ゲイリー・バートン(Gary Burton)のヴィブラフォン(ヴァイブラフォン:Vibraphone)の音⦆

音楽家ルソー

言葉の音声としての側面に注目すれば、18世紀フランスの思想家ルソー(J.J.Rouseau)の『言語起源論』が先駆的なのであろうか。こちらがかつて読んだものは、小林善彦氏による初訳(1970年:現代思潮社刊「古典文庫」37)。小林善彦氏は、「言語」1972年の9…

スズメバチの季節

庭の2本ある伽羅木(キャラボク)の枝葉があちこち伸びてきたので、昨日と今日の朝、剪定作業を行った。庭師さんのようなきれいな刈り込みは無理で、昔の下手な床屋さんのバリカン刈りといったところか。作業中アシナガバチとおぼしきハチが飛び回って〈威…

ケルトの薄明

「東京新聞」8/27号に、岡本勝人さんが、イェイツの『鷹の井戸』から着想した現代詩「ケルトの地から光がさす」を載せている。4聯からなる詩で、第2聨は「われわれはたましいで生きている」、第3聯は、「われわれはからだで生きている」、第4聯は、「わ…

帰納的推測

乏しい事例で推測するほかないのは、日常の生活では当然であるが、ブログなどで見解を表明する場合は、みずから戒めなければならない。野矢茂樹東京大学教授の、次の「帰納的推測」についての解説は愉快である。例題2 次の推測がなぜ不適切であるかを説明せ…

学校教育の成果

8/23閉幕の「第26回ユニバーシアード競技大会」での、日本人選手の控え室の使用について、中国微博(中国版ツイッター)で、その「美しさ」に賞賛の声があがっているそうだ。ゴミが一箇所に集められていたり、椅子や机がきれいに並べられていたりする様子が…

対川崎フロンターレ戦を観戦

] 昨日8/24の夜は、川崎市中原区の等々力競技場で名古屋グランパス対川崎フロンターレ戦を応援・見物した。どちらも前回負けているので、必死さが見られ見応え十分な試合であった。予想通りtightな展開で、前半はともに無得点、後半に動きがあった。21分川崎…

偉業について

あるいは一年中通してそうなのか知らないが、いろいろなかたちの「○○賞」の表彰が知らされるこのごろである。いずれもが、天与の才能と大いなる精進なしには、なし得ない偉業であろうことは、その分野に疎くともだいたい了解できることである。祝福するに吝…

「中庸」としての怒り

(わが書庫の岩波『アリストテレス全集』) J.O.アームソン・雨宮健訳『アリストテレス倫理学入門』(岩波現代文庫)は、スリリングな知的刺激にも富みながら『ニコマコス倫理学』の読み方を方向づけてくれる書物である。むろんそんなにスラスラ読める本では…

教室を支配するもの

リチャード・E・ニスベットの『木を見る西洋人・森を見る東洋人(THE GEOGRAPHY OF THOUGHT)』(ダイヤモンド社)によれば、「日本人も中国人も、一般に西洋人と比べて大きな社会的制約を受けている。中国人の場合には主として権威による制約であり、日本人…

「上野の森美術館」再訪

昨日8/20(土)は、東京「上野の森美術館」に再び出向いた。同級生のT君の入選作品を鑑賞するためだ。駅から美術館のほうへ昇る階段脇にアンスリウムの鉢が並べられていて、止まって息を入れた。 案内図でだいたいの見当をつけて、T氏の作品を探す。水墨画で…

フランスの競馬場

この秋10/2(日)に、フランスのロンシャン競馬場で催される「凱旋門賞」レースに、日本の競走馬が7頭も出走の登録をしているとのことである。現地で調整中だったヴィクトワールピサが、惜しくも断念することになったそうである。それにしても、「ジャパン…

女優寺島しのぶ

検索「寺島しのぶ」で、昨日の記事にアクセスしてくる方がいるようなので、2004年10月の『楡の木陰の欲望』の観劇記を再録しておこう。併せて、1989年11月「DENVER CENTER THEATRE COMPANY(デンバー・センター・シアター・カンパニー)」来日公演、ドノヴァ…

ひさしぶりの昭和アングラ・寺山修司

昨日(8/16)は、炎暑の下北沢の街を歩いて、芝居小屋「ザ・スズナリ」に出向いた。劇団「Project Nyx」(代表:水嶋カンナ)のマチネー公演、この劇団の舞台の観劇は初めてである。 出し物は、寺山修司作の『伯爵令嬢小鷹狩掬子の七つの大罪』で、構成・美…

ヒマワリの女優

夏目雅子さん主演の、『ザ・商社』と並ぶテレビドラマの傑作『西遊記』では、雅子さん演じる三蔵法師さまは毎回悪い妖怪らに捕まり、縛られて多くの場合吊るされてしまう。何かを口に押し込まれたまま、食べる前の水洗いということで、全身に多量の水をぶっ…

「異国人化」

現代思想といっても、やはり西洋においては聖書は思索の一つの拠点なのだろう。ジョルジョ・アガンベンの『アウシュヴィッツの残りのもの』(月曜社)には、聖書に触れた重要な箇所がある。 言葉を使うという行為が、詩的創造の行為と本質的には同じ脱主体化…

放射線医師

昨年は肺のCT検査を受けたが、幸い異状なしの結果で安堵したことを思い起こす。今年8月の健康診断の結果は、血圧上119(昨日家庭では上121)ほか、すべて問題なくまずは安心。しかしどんなに注意しようと、病気はどこからか襲ってくるものだと覚悟しておい…

上野の夏・2011年

昨日は、東京上野にある「上野の森美術館」に出かけた。いま展示中の「第24回 日本の自然を描く展」のわが兄弟の作品鑑賞が目的。入館客多く、賑やかだった。ほかはざーっと見物して、2Fの当該作品をじっくり眺めてから退出。美術館の真下、途中のフロアに並…

「美徳の不幸」

8/5(金)夜テレビ朝日のTVドラマ『ジウ』を観た。黒木メイサ演じる伊達基子巡査は、格闘能力抜群で、自らの弱さをすべて圧殺して、警視庁SAT(特殊急襲部隊)で活躍することになる。いっぽうの多部未華子演じる門倉美咲巡査は、情に弱く犯罪者の育った環境…

アジアはむずかしい

朝鮮史の研究者古田博司筑波大学教授の『新しい神の国』(ちくま新書)は、中国・韓国・北朝鮮の東アジアと、日本との文化・文明の異なるところを比較論的に論じていて、参考になる。いったいにイデオロギーと党派性および外交上の遠慮に制約されて、自由な…

仏教は有効か

仏教思想史家末木文美士(すえき・ふみひこ)東京大学教授の『仏教vs.倫理』(ちくま新書)は、新書版ながら、仏教および日本人の精神と思想について深く考えさせられる。仏教の思想的有効性について論じようとするとき、ここがベースキャンプとなろうか。 …