あるいは一年中通してそうなのか知らないが、いろいろなかたちの「○○賞」の表彰が知らされるこのごろである。いずれもが、天与の才能と大いなる精進なしには、なし得ない偉業であろうことは、その分野に疎くともだいたい了解できることである。祝福するに吝(やぶさ)かではないが、すべて賞賛を勝ち得たことのみが偉大なのではあるまい。いつも次の、中島義道氏の文章(『差別感情の哲学』講談社)を思い起こす。
……こういう人は、まさに地獄のような人生を生き抜いたとしても、誰からも誉められず、むしろ中傷され、非難され、迫害され、耐えに耐えしのんで、そのまま死ぬのである。わが子を(過失によって)轢き殺した母親や、わが子を(意図的に)打ち殺した父親は、普通の意味での被差別者ではないが、なぜ自分がこうした運命のもとに配置されねばならなかったのか、障害者や被差別部落出身者が抱くのと同じ疑問を感じるに違いない。
私は、誰がいかに偉大なことを成し遂げても、こうした人々の偉大さの足許にも及ばないと心の底から感じる。そして、カール・バルトの言葉がますます心に染み渡る。
人間を人間仲間のあいだにあって、すばらしく思わせるものはすべて仮面である。(『ローマ書講解』小川圭治・岩波哲男訳、河出書房)
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