2012-01-01から1ヶ月間の記事一覧

「ニート問題」

6年前(2006年刊)の雑誌特集であるが、『大航海・58号』(新書館)の「ニート特集」の議論は、今日もその有効性があるのだろうか。この特集の各論考は、当時の大量のニートの登場を、単なる雇用・労働問題でない、いわば文明の根幹にかかわる問題として捉…

髑髏について

雪催いとはいえないまでも、本日も寒い一日ではあった。今年は春になっても関東以西は平年以下の気温だそうで、ひょっとすると4月に降雪の日もあるかとの気象予報である。昔幸田露伴の『對髑髏』の舞台で、豪雪に埋まった金精峠(作品では「魂精峠と俗に呼…

雪と室生犀星

(第6刷:直筆署名入) 伊藤信吉の『詩のふるさと』(新潮社)によれば、みずからの思いが「黄昏色に染まりはじめた」老年期にこそ、20歳台の室生犀星の抒情詩がその思いを揺するのだと著者は述べている。幼年のころおそろしい吹雪の夜を過ごしているはずの…

正義論と「暫定協定」

このところの中東地域をめぐる緊迫した世界の政治情勢を想うとき、『日本経済新聞』(2004年9/30号・「経済教室」)に、ジョン・グレイ=ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授が、「石油巡り世界分裂の恐れ」と題して寄稿した論考をあらためて読み返…

文学としてのブログ

文芸誌『ふぉとん』主宰の辻章氏は、青年時代に政治的活動家として過ごし、「政治、哲学、思想等の著作は常に傍らにあった(「東京新聞」2008年6/23号)」とし、しかしそれらの全てをひっくるめて一つの「文学」として感得していたと思い起こした。 ……思想も…

昭和思想は終わったか

植村和秀京都産業大学教授の『昭和の思想』(講談社選書メチエ)は、複数のタイプの思想の伝統をもつ日本の思想史のなかで、直接現代につながる昭和期の思想を、20世紀(世界)思想史をも俯瞰しつつ、考察している。植村教授は、時系列的に追求するのではな…

2012年は終末か、新しい始まりか

星岳雄カリフォルニア大学サンディエゴ校教授によれば、2012年は、マヤの長期暦で約5125年の周期の終わりにあたる年で、12年の冬至の日に世界が終わるとの見方がある一方、マヤの循環的な時間観から、次の長期暦の始まりの年との説もあるそうである。(『日…

県立船橋高校も実績残した

昨日1/12(木)は、「全国高校サッカー選手権大会」で優勝した船橋市立船橋高校サッカー部の選手らが、船橋駅から市役所までの目抜き通り約1キロを徒歩でパレードしたそうである。こちらはその前日所用で船橋駅に行ったばかりで、昨日は沿道に立っていない…

女優・貫地谷しほりさん

昨年暮れから正月にかけて、貫地谷しほり出演の三つの単発TVドラマを視聴、それなりに面白かった。共演者が多彩で、この女優の今後の成長の糧になるだろうキャスティングだ。とくに「世界レベルの女優」(蜷川幸雄氏)大竹しのぶと母娘の役で共演できた経験…

現代の補陀落

現代の補陀落は、メディア的にはどうやら小国のブータンにあるらしいが、海の彼方に観音の理想郷を求めて渡海するわけでもあるまい。ジャーナリスト田口理穂さんが著者代表の『「お手本の国」のウソ』(新潮新書)は、さまざまな活動領域でお手本とされてい…

反哲学としての現代思想

東北大震災および福島原発事故以来、反近代・反文明の広い意味での哲学談義が盛んとなっている印象である。さて学問としての「哲学」とは、歴史的に限定された知的営為なのであろうか。 木田元中央大学名誉教授の『反哲学』(新潮社)は、哲学という学問分野…

教育における文学的センス

(わが家の庭の花梨=カリンの実。同じバラ科のマルメロとは、葉の形状および実の表面などで区別できる。) 西部邁氏の『教育—不可能なれども』(ダイヤモンド社)は、「問題としての教育」について、歴史と人生に持続性をもたらしてきた知恵への信頼を回復…