ギロチンの日:ブーランク作曲、ジョン・デクスター演出、ヤネック・ネゼ=セガン指揮『カルメル会修道女の対話』

www.y-history.net  本日は、「ギロチンの日」とのことである。フランス革命の最中、1792年4/25最初のギロチン処刑が執行されたことを記念している。ギロチン処刑といえば、WOWOW のオンライン配信で視聴した、METオペラ、ブーランク作曲『カルメル会修道女の対話』を思い起こす。

simmel20.hatenablog.com

▼10/3(土)午後2:30〜WOWOWライブで、ニューヨークのメトロポリタンオペラ(MET)公演(2019年5月11日)、ブーランク作曲『カルメル会修道女の対話』を視聴。魅了された。ジョン・デクスター演出、ヤネック・ネゼ=セガン(MET音楽監督)指揮のこの舞台は、抽象的でシンプルな舞台装置で構成され、ラスト第3幕のひとりひとりの修道女たちのギロチンによる処刑場面で、「金属の塊が木に落下して衝突する一瞬の音」を生々しく再現している。中心となるのは侯爵家の娘ブランシュで、美形のイザベル・レナード(メゾ・ソプラノ)が歌う。

f:id:simmel20:20201005153156j:plainf:id:simmel20:20201005171222j:plain

f:id:simmel20:20201005171456j:plain

               (イザベル・レナード)
 ブランシュがなぜ修道院に入らねばならなかったのか、そこのところは深くは理解しかねたが、カルメル会修道院長(カリタ・マッテラ)が「厳しい戒律のなかに逃避するということではないのでしょうか」とブランシュを試す言葉があって、軽率な選択ではないことを暗示している。バルザックの『ランジェ公爵夫人』では、ランジェ公爵夫人は愛の絶望ゆえに修道院に入るが、この場合は理由がわかりやすい。

f:id:simmel20:20201005173300j:plain

 感動的だったのは、修道院長クロワシー夫人が臨終間際に、その身体的苦痛と死の恐怖に耐えきれず、「自分のこれまでの長い修行は何だったのか」と激しく自問の言葉を発するところ。「窓を閉めなさい」とマリー修道女長(カレン・カーギル)が修道女に命じる。「外部の人に聞かれてはまずい」と。全体として「祈り」がテーマであり、この作品じたいがひとつの祈りであるとすれば、このメタ批評こそ作品の深さを保証するものだろう。▼