帰納的推測

 乏しい事例で推測するほかないのは、日常の生活では当然であるが、ブログなどで見解を表明する場合は、みずから戒めなければならない。野矢茂樹東京大学教授の、次の「帰納的推測」についての解説は愉快である。

例題2 次の推測がなぜ不適切であるかを説明せよ。
 哲学者って、変わってるよね。だって、大学で教わった哲学の教師なんかすごい変人だったもの。

 問題として出されればあまりに容易な問題であるが、日常的にはしばしば見受けられる形の推測である。たとえば、二人の女性に立て続けに冷たくあしらわれたために女性不信に陥る。心情的には分からないでもないが、論理的には、もう少し女性とつきあってみたほうがよいとアドバイスせずにはおれない。解答としては、サンプルの偏りを指摘することもできるが、それ以前にサンプルの数が少なすぎる。たんに次のように解答すればよい。
例題2の解答 サンプルの数が少なすぎる。
            野矢茂樹『論理トレーニング』(産業図書)p.73  

論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

論理トレーニング (哲学教科書シリーズ)

⦅写真(解像度20%)は、千葉県九十九里の食用菊カキノモト。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆

http://f59.aaa.livedoor.jp/~walkinon/chrysanthemums.htmlジョン・スタインベックの短篇「菊」)
http://nbu.bg/webs/amb/american/4/steinbeck/chrysanthemums.htm(同原文)