2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

社会学者もいろいろ

理論社会学の泰斗(たいと)富永健一氏の『社会学・わが生涯』(ミネルヴァ書房)に、第3回SSM調査(日本における社会階層と移動に関する学術的調査・研究)を踏まえての記述がある。 『一九七五年という年は、日本の戦後六〇年(一九四五年から二〇〇五年…

仲正昌樹教授に学ぶ(2)&付録

『日本とドイツ 二つの戦後思想』(光文社新書)は、新書ながら読みごたえがある。ドイツでポストモダンのメディア論を展開し、近代理性主義の延長上で考えてきたハーバーマス以降の現代思想を代表する一人らしいヨッヘン・ヘーリッシュの下で1年間研究して…

二つのフィギュア

最近WOWOWで、『ハイビジョンリマスター版・ウルトラQ』を放映していた。いくつか観たが、面白かった。新聞社カメラマン江戸川由利子役の桜井浩子さんも初々しくなつかしい。『ウルトラマン』のフジ・アキコ隊員役はその後だ。サイン入りの額入り写真を改め…

マイケル・カコヤニス監督追悼

たしか「ギリシアの黒澤明」と言われていたことがあった、マイケル(ミカエル)・カコヤニス(Michael Cacoyannis)監督が7/25に亡くなったそうである。マイケル・カコヤニス監督の作品は3本観たのみであるが、『その男ゾルバ』(ヒビヤみゆき座)のラスト…

故人を偲ぶ

この月に鬼籍に入(い)った人に、今年は俳優の原田芳雄さん(7/19)、2年前に指揮者の若杉弘さん(2009年7/21)、そして「心身の不自由が進み、病苦が堪え難し。去る六月十日、脳梗塞の発作に遭いし以来の江藤淳は、形骸に過ぎず、自ら処決して形骸を断ず…

国家と宗教(2)

佐々木毅学習院大学教授の『宗教と権力の政治』(講談社)は、『「哲学と政治」講義』シリーズの2にあたり、西洋中世における教会権力と世俗権力との角逐から、ルタ−・カルヴァンらの宗教改革を経由して絶対的権力としての「主権」概念が成立するまでの歴史…

国家と宗教

保坂俊司中央大学教授の『国家と宗教』(光文社新書)は、宗教を個人の内面にのみ関わってきた行動領域として限定するのではなく、統治機構としての国家および政治との関係に注目しながら、イスラーム、キリスト教、仏教、日本の神道について、その歴史と今…

中世としての現代

1)大窪一志氏の『「新しい中世」の始まりと日本』(花伝社)は、ニコライ・ベルジャーエフの「新しい中世」の用語を用いて、世界は近代の時代が終焉し、中世の時代が到来しつつあること、日本において近代思想史をどう整理、評価してこの世界史的動向に対…

ひとり芝居のこと

今年81歳になるという俳優・坂本長利(ながとし)が、この30日に、ひとり芝居『土佐源氏』を上演するそうだ。元ネタの原作者・民俗学者宮本常一の没後30年記念公演にあたるという。この芝居、すでに国内外で通算1140回を超えて上演されているらし…

東京神楽坂を歩く

昨日7/18の宵は、「神楽坂まつり」を控えて、華やぎを漂わせた神楽坂の街を歩いた。改修なった赤城神社をまず参詣、評判の「あかぎカフェ」は外から覗いたのみ。次はぜひ入りたい雰囲気であった。 それぞれほおずきの店になるらしい、ヨシズ張りがいくつも建…

ああ教育委員会

このところややバランス感覚を取り戻しつつある「東京新聞」7/15夕刊に、精神科医野田正彰氏へのインタビュー記事が載っていた。氏は、東日本大震災の被災地に何度も足を運んでいるということだ。(記事:増村光俊) 被災地を歩いて感じられたことは。)『被…

仲正昌樹教授に学ぶ(review二つ)

1)『「不自由論」−「何でも自己決定」の限界』(ちくま新書)は、現代思想・哲学の最前線の問題関心に触れられ、自らのあり方を見直すきっかけを与えられる。それこそ著者の期待する「哲学の分り方」ということである。近代ヒューマニズムは、普遍的正義を…

蜷川演劇で水しぶきを浴びる

『血の婚礼』の観劇記で、「舞台全面にほとんど止むことなく降り注ぐ雨は、今回は3列目(C列)の席で気にならなかったが」と書いておいたが、では「水しぶきを浴びた」舞台は何だったかと、記憶をたぐり寄せた。2005年5月の「メディア』であった。HP記載の…

路地裏の『血の婚礼』

夏になると、耳の鼓膜が不調になる。これはかつて通った耳鼻科医師によると、子供のころ中耳炎の治療で穴をあけた鼓膜が、アレルギー性の咽喉炎で咳を繰り返すことなどから痛んだりするのだそうである。 昨日7/13(水)観劇した、清水邦夫作・蜷川幸雄演出「…

吸血鬼は女か男か?

夏になるとなぜか、幽明の境を漂流しているらしい吸血鬼の存在が思い起こされる。さて映画『ドラキュラ伯爵』シリーズの名優クリストファー・リーのイメージが鮮烈で、吸血鬼は男との思い込みがあるが、そうでもないようである。 吉田純子神戸女学院大学教授…

「ピンク・フロイド・バレエ」

7/10に「踊りの魔術師」ローラン・プティ(Roland Petit)が亡くなったそうだ。ベジャールやピナ・バウシュほど、その来日公演を観てはいないが、2004年2月、「牧阿佐美バレエ団」の『PINK FLOYD BALLET』を振り付けた舞台は、観ていて夢のようなひとときで…

〈少女〉写真のエロス

6/17(金)東京千代田区の「神保町画廊」で村田兼一写真展「少女に棲む魔法」を観たあと、「Amazon.com」で発注していた、村田兼一写真集『NAKED -PRINCESS』(EDITION REUSS)が届いた。この写真家については、『JAPANESE PRINCESS』(同社)以来2冊目の写…

秩父の美術館

この季節になると、TVの旅番組などで埼玉県の秩父のことがよく紹介されている感じである。オニヤンマ・ミヤマクワガタ・ナナフシ・オオムラサキなどがあちこちで棲息していた、わが追憶の風景のなかにあって、番組ではもはや映像として出てこない施設が一つ…

なつかしの文月

(「FLASH」2009年3/10号:撮影・野澤亘伸(ひろのぶ)) 昨日七夕の日に、東京池袋演芸場にて「桂歌丸師匠咄家生活60周年記念」の高座があったそうだ。そういえば、師匠のお嬢様のラクドル田代沙織さん(都立小石川高校出身)のお誕生日が本日7/8。さらなる…

ユダヤ文化について

ユダヤ人思想家エマニュエル・レヴィナスを師と仰ぎ、その哲学を翻訳紹介してきた、神戸「凱風館」道場主内田樹(たつる)氏の『私家版・ユダヤ文化論』(文春新書)は、「ユダヤ人問題について正しく語れるような言語を非ユダヤ人は持っていない」という基…

伊藤若冲覚書

http://www.nhk.or.jp/artbs/jakuchu/ (「若冲ミラクルワールド」) この春に、NHK「BSプレミアム」で、『若冲ミラクルワールド・全4回』が連続放送され、めずらしく全回通して視聴した。ナレーションが中谷美紀さん、ナビゲーターが嵐・大野智クン。大野…

大江健三郎は小説だけ読む

一昨年(2009年)は、the 200th anniversary of the birth of Edgar Allan Poe(1809年1/19〜1849年10/7)にあたっていた。ポーが亡くなるその2年半前に病死した、14歳年下の妻ヴァージニアを偲んで詠われたのが「アナベル・リイ(Annabel Lee)」だ。齋藤…