マイケル・カコヤニス監督追悼



 たしか「ギリシア黒澤明」と言われていたことがあった、マイケル(ミカエル)・カコヤニス(Michael Cacoyannis)監督が7/25に亡くなったそうである。マイケル・カコヤニス監督の作品は3本観たのみであるが、『その男ゾルバ』(ヒビヤみゆき座)のラストシーンをいまもって感動的に思い出す。クレタ島のある村を舞台にした物語だ。亡父の遺した炭坑を採掘しようとした、内省的な知識人バジル(アラン・ベイツ)と、ゾルバ(アンソニー・クイン)という現場監督の二人が、その事業に失敗してしまう展開。バジルは、激しく愛を確かめあった美しい未亡人(イレーネ・パパス)を、村の因襲によって殺されてしまい、二重の絶望に遭う。野性の男ゾルバの考案したダンスを、二人は海浜ではてもなく踊り続けるという結末であった。この最後のダンスの場面に、体が震えるほど感激した記憶がある。「アンソニー・クインは動物的活力と幼児の無邪気さと深い人間の叡知を見事に表現して見せた」との、当時の「ヘラルド・トリビューン」の讃辞はその通りであったろう。
 ほかにいずれもエウリピデスギリシア悲劇を題材にした、『エレクトラ』(ATG・日劇文化)と『イフゲニア』(岩波ホール)を観ている。イレーネ・パパスが前者ではエレクトラ、後者ではその敵役となるクリュタイムネストラを演じているのは面白い。エウリピデス映画化三部作品中『トロイアの女』は未見である。イレーネ・パパスのほかに、わが贔屓のジュヌエーヴ・ビジョルドが出演しているということなので、この円高に乗じて、さっそく「amazon.com」で『The Trojan Women』のDVDを購入申し込みしたところ。到着を愉しみに待ちたい。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町の校舎を飾るグリーンカーテン。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆