北欧モデルの福祉と介護

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 川口マーン惠美さんは、日本では、たとえばデイサービスの送迎の場合、「ゆっくり歩いてこられる人も、皆、まとめて送迎車で運ぶ」ように、「転ばぬ先の杖」とばかりに大事をとることが「他の多くのことにも現われている」としている。

 ところが北欧モデルでは、自己責任の度合いが高い。高齢者は、家に一人でいる限り、常に何かが起こる危険と隣り合わせだ。転倒する可能性も、もちろん高い。しかし、北欧では、事故は起こりうることとして容認されている。転倒してもすぐに助けに行ければよいという考え方だ。助けに行けなければ、それは仕方がない。それよりも、高齢者の自立と自由が優先される。そして、採算性も。日本は、北欧型の介護を理想化しすぎている嫌いがある。

「転ばぬ先の杖」を徹底していけばいくほどお金がかかるのは当然のことだ。もちろん、人手もかかる。リスクマネジメントは、どこかで線を引かなければいけないが、日本人はその線の引き方があまりうまくない。このままいけば、福祉にかかる費用は、どんどん膨らんでいくだろう。(p.104)