くすりと現代医療をめぐっては、『週刊現代』(講談社)7/2号、7/9号、7/23号、『週刊文春』8/4号など、(『週刊文春』のほうは、現代医療のメリット・デメリットの両方に目配りしているが)告発的記事が盛んなようである。検査における過剰診断、手術のリスク、糖尿病・高血圧・高脂血症などのくすりの副作用について体験者の事例を紹介して〈脅して〉いる。
くすりの利用についてでは、例えば、5/20日本糖尿病学会&日本老年医学会共同発表の「高齢者糖尿病の血糖コントロール目標について」では、これまでどの年齢・健康状態でも一律にHbA1cが「6.5%以上は高血糖」としていた基準を、1~2%も緩和している。高齢者医療が専門の長尾和宏医師は、「新しい目標値のほうが、理にかなった値だと思います。多くの医師がまだあまり意識していませんが、実は、特に高齢者の場合、高血糖よりも低血糖のほうがよっぽど恐ろしい。本当は、『血糖値の下げすぎ』で体調を悪くしている高齢者が多いということです」と述べている(『週刊現代』7/2号)。なるほど。
あるいは、認知症薬による興奮症状を抑えるために、さらに抗精神病薬や抗不安薬などが処方され、その副作用で寝たきりになる患者もいる。しかし浦上克哉鳥取大学医学部教授は、「薬の効果が期待できない人や寝たきりになった人は、薬の減量や中止を検討するのが妥当な判断だと思います。ただし、杓子定規にやめるべきではありません。というのも、寝たきりになっていても、『やめないでほしい』というご家族がいるからです。主治医がそれを聞き入れずにやめたところ、それまでは呼びかけたら笑顔を見せたり、手を握り返してくれていたのが、まったく反応しなくなってしまったそうです」と述べている(『週刊文春』8/4号)。
血圧に関しては、こちらは夏は、(家庭)収縮時血圧が110〜125なので降圧剤もいまのところ無縁であるが、降圧剤の服用もいろいろと問題があるようで、「冬場と同じ降圧剤を飲み続けて、夏場に血圧が下がり過ぎ、ふらついて転倒するということもありうるので、これからの季節はとくに気をつけたいところだ」(『週刊現代』7/2号 )。納得。
検診における過剰診断について、『週刊現代』7/13号は、乳がん検診の過剰診断について警告している。「患者の生死には無関係な早期乳がんが見つかるケースです。実際、'12年には、乳がん検診によって診断される乳がんの30%は過剰診断であるという論文が報告されている」と、名郷直樹医師が語っている。過剰診断については、次のNATROM医師の『「過剰診断」とは何か』がわかりやすい。
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20150324#p1(『NATROMの日記:「過剰診断」とは何か』)
http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20140716(「NATROMの日記:近藤誠氏による乳がんの生存曲線のインチキを解説してみる」)
http://blogs.yahoo.co.jp/taddy442000/34724936.html(「近藤誠を信じ、早期がんを放置した結果…」)
http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20120310/13313773079「正しい医療とはー李漢栄(Kan-ei,Lee)医師:2012年3/10」)
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakayamayujiro/20160724-00060285/(『「がん5年生存率60%超す」報道の意味は?医師による解説』)
http://www.uh.philips.co.jp/interview_01/#anchor4(「マンモグラフィ検診の真実。〜乳がん検診を受ける本当の意味〜」)
https://gansupport.jp/article/cancer/breast/breast04/2644.html(「HER2陽性乳がんとハーセプチン」)
http://www.you-homeclinic.or.jp/Dr_muto/misson/ ⦅「武藤真祐の使命(Social Misson)」⦆
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糸井 重里 :ぼくは、じぶんが参考にする意見としては、「よりスキャンダラスでないほう」を選びます。「より脅かしてないほう」を選びます。「より正義を語らないほう」を選びます。「より失礼でないほう」を選びます。そして「よりユーモアのあるほう」を選びます。(2011年4/24)
http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20141105/1415196248(「『知ろうとすること。』を読む:2014年11/5」)