現代フランスと対移民難民の歓待(hospitality)


 http://www.dokushojin.co.jp/(「週刊読書人」)
 『週刊読書人』3/4号掲載、フランス国立社会科学高等研究院教授の社会学者ミシェル・ヴィヴィオルカ氏と、現代フランス思想研究家の一橋大学教授鵜飼哲(さとし)氏の対談(同時通訳:三浦信孝&河野南帆子)は、イスラム国ほか過激派のテロに対するヨーロッパにおける「赦し」と、移民難民に対する「歓待(hospitality)」の問題を討議していて、読み応えがあった。ただし、わが日本ではやはりまだ対岸の火事と思えてしまうのである。
 とくに注目したこととして、鵜飼氏が、かつては多くの外国人を受け入れてきた伝統をもつフランスであったが、いま「どうしてフランスは、外国人あるいは難民から見て、不人気な国になってしまったのでしょうか」と問いかけたのに対して、ヴィヴィオルカ氏が四つの背景で説明できると応じているところである。勉強になった。ヴィヴィオルカ氏の分析を整理しておこう。
1)経済的な困難。フランスに行っても職が見つからない。経済的リベラリズムが進んだことによって失業が増えている。福祉国家的性格も崩れてきている。
2)移民たちは自分たちの家族や縁者からなるコミュニティで集まろうとするが、フランスでは例えばイギリスなどと比べて、そうしたコミュニティの形成が弱い。
3)極右勢力である国民戦線が力を増しているがために、移民難民が差別され迫害されるのが目に見えている。
4)警察がテロ対策。治安対策で警戒態勢を強めていて、移民たちはすぐに身分証明証の提示を求められる。フランスが警察国家になってしまっている。