豊島公会堂では、昔どこの主催であったか、花田清輝と井上光晴の講演会を聴いたことが思い出される。花田清輝は、しきりにアカデミシャンということばを使い、アカデミズムに対する挑発的な語りが面白かった。井上光晴は、自らの詩の朗読に時間を割き、「朝鮮ピー屋」ということばの響きが印象的であった。
隣接して建っていた豊島振興会館には大小の会議室があり、和室の会議室で、文学上の畏友であった福島進の作品集『夏の旅』(コスモ出版)の出版記念会が催されている。また別の会議室では、たしかアナーキスト系の黒色戦線主催の連続講座で、当時在野の身で若き廣松渉から『ドイツ・イデオロギー』編輯をめぐる問題点について、じつに刺激的な講義を聴き、別の日には、吉本隆明から『言語にとって美とはなにか』の基本的着想について話を伺えたのであった。
http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51896717.html(「廣松渉『唯物史観の原像』」)