『飢餓陣営(KIGA zinei)』43号を読む


 佐藤幹夫個人編集『飢餓陣営(KIGA zinei)』43号は、「戦後思想を読み継ぐー村上一郎」の特集があるとのことで、注文入手、さっそく「桶谷秀昭氏を囲んでー回想・村上一郎との三〇年」と、神山睦美氏の「アイロニーとしての村上一郎」の2編を読んだ。村上一郎に関して初めて知ること多く、面白く読めた。『無名鬼』でいっとき村上一郎と盟友であった桶谷秀昭氏の回想は、当時の政治・文化状況の裏のようなところが述べられていて、手品の種明かしをされた印象も抱かされた。
 座談の最後で「村上一郎の最後にたどりついた思想は『草莽論』です」と述べている、桶谷秀昭氏は、その前では自分自身の著作のことを語っている。
……『昭和精神史』の「戦後編」はこんど絶版になりました。どこかから圧力をかけられたのかなとも思うんだけど、どうでしょうね。絶版で、もう手に入りません。まあそういうブルジョワ商業出版(※『文学界』や『新潮』など)の出版社が、書き手を探して同人雑誌に近づいてくるという風潮があったことはたしかで、これは戦後の新しい風潮だったのではないでしょうか。……(p.82)
 ある時期風潮として、評論(集)が現代詩の代わりとして、もしくは現代詩として貪るように読まれたことがあったのである。
(わが書斎の桶谷秀昭著作)