大河内昭爾氏を悼む

 8/15(木)武蔵野大学名誉教授で文藝評論家の大河内昭爾氏が亡くなった。『東京新聞』8/24(土)夕刊「大波小波」欄で、匿名の「旧世代」氏が書いている。
……文壇の一隅にあって、同人雑誌作家の仕事を引き立てようと長らく努力してきた大河内昭爾が逝った。享年八十五。地味な存在だったが、彼の温かみのある批評に励まされつつ作品を書いてきた人々にとっては嘆きは大きかっただろう。……

 かつて『メドゥーサの眼』(龍書房)所収の「茜の声」を『文学界』の「同人雑誌評」で批評していただいたことが思い出される。
……「茜の声」は、予備校教師と教え子だった女子学生とのつきあいがいかにもそれらしくとらえられていておもしろい。中年の教師の若い女性への関心や下ごころと、女子学生の若さを武器とした意外な手くだとのやりとりが巧みに描かれて、結びも気がきいていて短篇の魅力をそなえている。……(大河内昭爾氏『文学界』1996年12月号)
 謹んでご冥福を祈りたい。