『群系』36号発刊



 文藝批評同人誌『群系』36号が発刊された。「〈特集〉同時代の文学」に並んだ論考は、対象となっている作家の作品についてほとんど知らないので、読む気はしない。しかし、文学オタクともいうべき論者らの熱気は目次から伝わってくる。昨年12/5亡くなられた、近代文学研究者の野口存彌(のぶや)氏の追悼特集が読み応えがあった。故人の文学への情熱と志が感じられ、お見かけした生前の風貌など思い起こしたことであった。
 なお、(おそらく)編集者の追悼特集冒頭の文でも、武蔵野雨情会会長の声楽家佐藤文行氏の追悼文でも、野口存彌さんが昨年3月に「脳出血」で倒れたとあるのに、澤田繁晴氏は「真摯なお人」と題する追悼文で、自分は3年ほど前に脳内出血の病に襲われたが、野口さんは「脳梗塞で倒れられ」とある。今後野口存彌研究を試みる者も出るであろうから、事実の記録はきちんとしておきたいもの。さすが感動的な安宅夏夫氏の追悼文では、芥川龍之介が風呂で佐藤春夫の体躯が「堂々としていて長命」であることを見て取って、「弱気を吐いてしまった」とあるのは、「弱音を吐いて」か「弱気の言葉を吐いて」の誤植であろう。