スコットランドの芝居を楽しむ



 昨日8/23(金)は、東京有楽町シアタークリエにて、グラスゴーを拠点に演劇活動をしているとのD.C.ジャクソン作、『MY ROMANTIC HISTORIY〜カレの事情とカノジョの都合〜』を観劇した。翻訳は小田島恒志、演出は、栗山民也。キャスティングは、主役の男女、トム=池内博之、エイミィ=中越典子以外は、加藤忍が二人の職場の同僚サーシャと、トムの〈永遠の恋人〉アリソンを、土屋裕一がエイミイの〈永遠の恋人〉カルヴィンとトムの友人ジェシーほかを、春風ひとみがトムの祖母とエイミィの母ほかをそれぞれ掛け持ちで演じている。トムにとって理想化された女性アリソンと、ごく平凡に見える同僚サーシャを同じ女優が演じることによって、状況あるいはそのときの年代によっては、思い込みでどうでも入れ替わることもあり得ることを暗示して面白い。ただ予算の関係でそうしたのであれば、穿ち過ぎとなろうが。
 この演劇で特徴的なことは、トムとエイミィの観客に向けたそれぞれの傍白の台詞と、二人の会話との交錯の構造であろう。新しく入った職場で出会ったトムとエイミィが金曜日のパーティの後、酔った成り行きでエイミィの部屋で一夜を過ごしてしまう。それからも含めて同じ一連の出来事を、はじめはトムの視点、続いてエイミィの視点で振り返る。二人は過去の恋を追憶し、それぞれにとっての〈永遠の恋人〉との出会いと別れ、沈殿している想いを反芻し、現在の関係が恋愛のまねごとだと思い悩む。このあたりの会話は洒落ていてクスッとさせる。大した事件は起こらない。しかし2時間幕間なしの舞台は、決して飽きさせない。作者の私小説的物語らしいが、場面転換の妙および傍白と会話とのズレがもたらす可笑しさが随所にあって、楽しいお芝居ではあった。
 同僚サーシャの恋人が〈永遠の恋人〉カルヴィンであり、背中にエイミィの名を彫ったはずの入れ墨がじつは二の腕であったことなどをエイミィは知り、いっぽうトムは〈永遠の恋人〉アリソンが結婚して薬剤師になっていることを知らされる。エイミィの妊娠を契機に、最後は二人が結ばれる結末を予想させて幕となった。心憎い。
 http://www.tohostage.com/myroma/index.html(「『My Romantic History』公式HP」)