堀辰雄研究と竹内清己氏

 本日『東京新聞』夕刊「大波小波」欄で、匿名子「風去りぬ」が、公開されている映画『風立ちぬ』(宮崎駿監督)に触れて、映画の一つの要素になっているらしい堀辰雄の『風立ちぬ』のことを話題にしている。
……堀は戦前から戦後にかけてよく読まれ、全集は一九五〇年から七〇年代にかけて三回も出版された。今年は没後六十年だが、残念なことに忘れられていた作家だ。研究本も竹内清己の著作以外に目新しいものはここ十数年出ていない。映画を観て堀文学をオシャレと勘違いする人のために警鐘を鳴らしておきたい。
 堀文学は軽井沢のイメージとは異なり、強靭な精神に支えられている。東京の下町に育ち、大正末期から昭和初期にかけてプロレタリア文学私小説が全盛のなか、あえてモダニズムの道を選び、戦中の時流にも迎合しなかった。病と向き合い貧しい生活に甘んじて、なおかつそれを見せず自分の文学を確立した堀の生き方は、国文学研究という古い本棚で埃まみれになるのではなく、いまこそ文芸批評の対象として語られるべきだ。……
 東洋大学名誉教授竹内清己氏の、堀辰雄研究の労作(編著)は知る限りで以下の通りであろうか。

堀辰雄と昭和文学 三弥井書店 1992年
◯作家の自伝 (52) (シリーズ・人間図書館)  日本図書センター 1997年
堀辰雄事典 勉誠出版 2001年
堀辰雄風立ちぬ』作品論集 クレス出版 2003年
堀辰雄―人と文学 (日本の作家100人) 勉誠出版 2004年 
 
 房総文芸選集のこちらの作品集(東銀座出版社:1993年)では、竹内清己氏に解説を書いていただいている。いまにして思えば、畏れ多いことであった。

文学構造―作品のコスモロジー

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