中国の二人の異端作家は?

 今年度ノーベル賞受賞の中国の作家莫言(モオ・イエン)の作品は、恥ずかしながら一作も読んでいない。(いまは、ノーベル文学賞受賞劇作家のエルフリーデ・イェリネクの戯曲を読んでいるところ。)この作家が反体制の表現者であるのかどうなのかなど、わかるわけがない。
 かつての中国における異端の作家=表現者としては、貧しいこちらの知識では、映画監督の田壮壮(TIAN ZHUANG ZHUANG=ティエン・チュアン・チュアン)と、画家の曹勇(CAO YONG=ツァオ・ユン)の二人が存在する。


 田壮壮は、作品『青い凧』で広く知られるようになったようであるが、1990年代、それほど名も作品も知られず、個人的にも映画館ユーロスペースでの連続上映の機会で初めてその名を知り、作品に接することになったのである。いくつかの作品が当時上映禁止になっていたそうである。『狩り場の掟』と『清朝最後の宦官:李蓮英』の2作品を鑑賞している。「中国のシュール・レアリスト」とのlabelingは、必ずしも適切ではないなと思った記憶がある。映画としてはどちらも感動した。
 なおいまは閉館してしまった文京区三百人劇場ではよく中国映画の特集上映を企画していて、こちらは利用しやすい環境に勤務しながら、『紅いコ−リャン』は見逃し、『菊豆(チュイトウ)』と『五人少女天国行』しか観ていない。


(「週刊宝石」光文社:1992年5/28号)
 画家曹勇の作品は、1992年5月の品川O美術館の個展で鑑賞した。実物(没収作のコピー写真を含む)に接したのは、このときが最初にして最後であった。チベット仏教の戒律と人間の欲望・誘惑との相克をテーマに、過激な描写で表現していて、これが中国の絵画かと驚愕したのを覚えている。とうぜんながら当局の弾圧にあい、チベットを経由しながら日本に逃亡してきたのだった。その後アメリカに渡り成功しているようである。かつては中国で結ばれて、曹勇と行動をともにしていた前夫人の合田彩さんのHPで詳細が知られよう。アメリカの画商のサイトで紹介されている作品を眺めると、かつての表現における毒と哀しみはなく、商業主義に順応している印象である。
 http://chupkamuy.com/atoi/Top.html(「Aya Goda Website」)
 http://www.caoyong.net/(「Cao Yong Art Paintings」)
 http://www.caoyong.us/(「Cao Yong Masterpieces」)
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家の、アメリカヒイラギの紅い実。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆