冬ごしの木の芽


 かつて都立上野高校の教頭(現職名副校長)の宗方俊遃(としゆき)氏から贈られた『木の芽の冬ごし(カラー版「自然と科学」1』(岩崎書店)に、木の芽についてわかりやすい解説がある。
……植物のからだは、全部細胞でできていますから、成長点は細胞をつくるところ、つまり、植物のからだの大もとなのです。もし、この成長点がなくなってしまったら、植物はもう成長していくことはできません。
 冬のきびしい寒さとはげしい乾燥から、植物はいろいろな構造で、大切な成長点をまもっているのです。
 成長点は、植物体のはじの部分、茎の先端(芽)と、根の先端にあり、植物体をさきへさきへと成長させていきます。根の成長点は、土のなかにあって、寒さや乾燥にさらされることはありません。そこで、根の先端には、芽のような成長点をまもる構造は発達していません。……
……芽には、花になるものと葉になるものがあります。花になる芽を花芽(かが)、葉になる芽を葉芽(ようが)、ひとつの芽に花と葉のりょうほうがはいっている芽を混芽(こんが)といいます。
 花芽は、まるくて大きいのがふつうです。春はやく花のさく植物では、芽のなかにもうすっかり花ができあがっています。葉芽は、花芽にくらべると、小型でじみな形をしています。……

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家の冬の木の芽。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆