田中修甲南大学教授の『植物はすごい』(中公新書)は、植物について(素人にとっての)多くの新しい知見を与えられ、読み物としてもじつに面白い。植物がそれぞれ、生き延び子々孫々繁栄するために、多彩なメカニズムを内蔵させていることに驚き、感動させられる。
からだを守るためのトゲ—バラ、アロエ、ワルナスビ、ピラカンサ(ピル=火、アカンサ=トゲ)、ヒイラギ、アリオドシ、イラクサ(蕁麻)など。
食べられたくないところ(とき)を味(渋み・辛み・えぐさ・酸っぱさ)で守る—クリ、カキ、タデ、ダイコン、ゴボウ、ワサビ(本ワサビ)、カラシナ、コショウ、ショウガ、サンショウ、トウガラシ、ゴーヤー、カタバミ、レモン、ミラクル・フルーツなど。
病気予防—ネバネバの液:タンポポ、ゴムの木、レンコン、イチジク、ヤマイモ、オクラ、パイナップルなど。 かさぶたをつくる:ハガキノキ(タラヨウ)、バナナ、リンゴなど。 香り:ヒノキ、クスノキ、サクラなど。
……虫などが葉っぱをかじって傷がつくと、そこから病原菌が入り込みます。だから、黒い物質で固めることで、病原菌が入り込めないように傷口をおおってしまうのです。人間の場合に当てはめると、この現象は、傷口にかさぶたができるようなものです。
これは、葉っぱが生きているからこそおこる反応です。そのため、水気がなくなって乾燥してしまった葉っぱには、文字は書けません。もしタラヨウの葉っぱを手に入れたら、新鮮なうちに文字を書いてください。……(同書p.80)
毒で守る—シャクナゲ、トリカブト、ベラドンナ、アジサイ、キョウチクトウ、ユーカリ、ヨウシュヤマゴボウ、ナンテン、アセビ、カワチブシ、ヒガンバナ、ソテツ、ジャガイモ、ギンナン、モロヘイヤ、シロインゲンマメ、スイセン、フクジュソウ、チョウセンアサガオ、カロライナジャスミン、マンゴーなど。
強い太陽の光と闘うメカニズム=抗酸化物質の色素(アントシアニンとカロテン)—ハイビスカス、ツユクサ、キキョウ、リンドウ、ペチュニア、アサガオ、キク、タンポポ、マリーゴールド、ナノハナ、赤ジソ、サニーレタス、ムラサキキャベツ、ムラサキタマネギ、青ジソ、パセリ、シュンギク、コマツナ、ニラ、ホウレンソウ、ダイコン(葉)、イチゴ、ブドウ、ブルーベリー、トマト、スイカ、カボチャ、ピーマン、赤パブリカ、カキ、ビワ、オレンジなど。
逆境に抗して—からだを冷やす:水の蒸発を調節=CAM植物(ベンケイソウ、サボテン、カランコエ、セイロンベンケイソウ、パイナップルなど)。 寒さに耐える:葉っぱのなかに糖分を増やす(寒じめホウレンソウ、寒じめコマツナ、雪下ニンジンなど)、ロゼット状態で葉っぱを展開(ハルジオン、ヒメジオン、セイタカアワダチソウ、など)。 巧みなしくみ:ほかの木に巻きついて繁茂(シメコロシノキ)、食虫植物(ハエトリソウ、ウツボカズラなど)、悪臭を出し、受粉の媒介となるハエを呼び込むラフレシア、カサカサの殻で新しい生育地へ移動するピーナッツなど。
タネなし、花粉なしでも命をつなぐ—タネなし:パイナップル。花粉なし:スギ。
地下茎でつながる—ワラビ、ドクダミ、スギナ(子はツクシ)。
葉から芽が生まれる—セイロンベンケイソウ、コダカラソウ。
まったく「植物たちが私たちと同じ生き物であり、いっしょに生きていると実感できます」と著者が述べる通りである。
【追加】2003年7/25(木)BS日テレ放送(午後10:30~11:30)で、田中修教授が登場、植物に関する軽妙なトークを展開。
植物はすごい - 生き残りをかけたしくみと工夫 (中公新書)
- 作者: 田中修
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/07/24
- メディア: 新書
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