コレクターについて

芸術新潮』4月号は、800回忌記念として、法然を特集している。実家の菩提寺が浄土宗であることから、購入。昨年猛暑のなか参詣した総本山知恩院や、何年か前に訪れた大本山くろ谷・金戒光明寺の写真など、興味深く眺めた。
 小特集で、アート作品を蒐集する夫婦を5組紹介している。まだ30代の竹内さん夫婦は、旦那の趣味とコストパフォーマンスもあって、現代美術の作品を集めているそうだ。「美術作品を買うんだ、という意気込みもないですし、飾っていて楽しければそれでいい」と、勇希さんは述べている。世代はだいぶ違っても共感を覚えた。
 こちらも財力がまったくないので、大したコレクションはないが、高橋甲子男画伯の作品、土井典さんの人形&仮面のミニコレクションは、個人蔵ではそこそこ得意になれるだろう。写真集は、けっこう所蔵している。職業上写真にかかわる人以外ならば、コレクターと自称できるかもしれない。わが所有の写真集で最も高価なものは、『服部冬樹作品集』(ツァイト・フォト石原悦郎監修、共同文化社300冊限定発行)で、価格は15万円。これを購入できたのは、現代美術コレクターで私設ギャラリーを管理している、下田賢司氏のお蔭であった。 
(『服部冬樹作品集』)
 板橋区成増の「アートスペース・シモダ」へ、開催中の「服部冬樹展」をたまたま観に行ったところ、主の下田氏と出会い、ご子息の兄弟ともに、当時奉職していた都立小石川高校の生徒および卒業生だとわかり、意気投合するところとなった。下田さんは、監修者であるツァイト・フォトサロンの石原氏と縁があり、この作品集を購入することができたのであった。いまもごくたまに、引っ張りだすのに少々力のいる、ガラス箱に納められたこの写真集を鑑賞している。 
 現代美術のコレクター下田賢司氏については、『美術手帖』(1995年2月号・美術出版社)の「現代美術のコレクター訪問」特集で、4頁にわたって紹介されている。現代美術の愛好家であれば、おそらく驚倒するような質と量の収蔵である。しかも大型の作品群については、静岡の美術館に預かってもらっていると記されてある。
 昆虫標本は、かつて神宮前の船場マンションにあった「Tropikana=トロピカーナ」で入手したオニツヤクワガタほか少しばかりあるが、量はともかく、いずれも思い出の刻印された貴重なものばかり。昨年夏捕獲できた、ウバタマムシは飼育していたため、標本の機会を失ってしまった、残念。いまやヤマトタマムシより希少価値があるだろう。しかしこちらは、とても昆虫の収集家とは呼べない。 
(「愛知万博」インド館で購入のフクロウの置物と、コフクロチョウ)
 大きな被害に遭遇しただろう仙台の地には一度訪れただけだが、そのとき「藤本標本」のコフクロチョウを購入している。仙台では、これがいちばんの土産である。速やかな復旧を祈りたい。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町に咲くガザニア。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆