『文学+|02|』(凡庸の会)を読む(1)

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 『文学+』(凡庸の会)は、「文芸批評と文学研究の対話を緩やかなモチーフとする同人誌」で、今号は第2号。もう一つのテーマとして「文学史の再構築」「文学史の書き換え」があるとのこと。巻頭に大石将朝氏(麻布中・高教諭)司会進行の[座談会レジュメ]「明治文学史の再構築に向けて」が置かれている。西田谷(にしたや)洋富山大学教授・大橋崇行東海学園大学准教授・木村洋上智大学准教授・出口智之東京大学大学院准教授、近代文学研究の気鋭の研究者と思しき人らによる「新しい明治文学史観」の討議である。その基底には、『小説神髄』神話・『自然主義』神話・『漱石』神話を疑って考え立証するという立場を共通にしていて、4人の研究者はいずれも「明治文学研究の主流をなしてきた、漱石・鴎外の研究者ではなく、従来の明治文学史、および中村・柄谷史観において軽視されてきた文学者に焦点を当てている」。
 門外漢として個人的には、西田谷氏の「現在のエンターテイメント、アニメなどのジャンルの先駆的なもの、源流的なものとして明治の政治小説があるのでは」、大橋氏の「山田美妙の『いちご姫』を見た時すごいと思ってしまった。山田美妙の言葉というのはすごく構造的に作られていて、作為的というか、言葉そのものを作っていこうとする傾向がある」、木村氏の「作家主義・精読主義でもなく、第三の道文学史研究こそわが進むべき道と思った」との発言にも興味をもったが、幸田露伴研究の出口氏の次の指摘に感銘を受けた。

 例えば、さっき言った根岸党の場合、作家だけじゃなくて、劇評家とか、絵師とか、新聞記者とか、ほかにも俳人とか官僚とか裁判官とか、本当に色んな人が自由に交遊していて、そのごった煮みたいな中から作品が生まれてきている。彼らが一緒に作った作品ではなくても、それぞれの人の作品にはそういう交友関係が確かに影響している。露伴にも、絵師や劇評家の影響を受けて書かれた作品はたくさんあるのだけれど、文学史として語ると、そういう人たちはまず、というよりはほぼ完全に、落とされてしまう。いなかったことにされてしまう。でもそれだと、色んなことがわからない。(p.22)

 

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