(ピエール・ガスカールの)本を探す

 凡庸の会編集・発行の『文学+(03)』の座談会「大江健三郎論のために」を読んだ。初期作品『個人的体験』まで熱心に読んでいたが、こういう天才に関わっているとみずからが消えてしまう怖れあり、(三島由紀夫のと併せて)本を市川の古書店に売り飛ばし読まなくなった。近年は晩年近くの作品をいくつか読んでいる。変わらず読後驚嘆。座談会での共通理解(?)として代表作としている『万延元年のフットボール』などはむろん読んでいない。
山本:高橋さんは、オーデンとかガスカールなどと大江の関係を探っておられますよね。
高橋:大江論に限らず、自身が持っている鋭利な刃物のような理論やテーマでスパッと小説を切る、その切れ味や切り口の斬新さで勝負する論が多いと思うのですが、私は大江小説っていったいどうなっているのかを解き明かしたくなって、で、うまくいかない部分は、比較文学というか、渡辺一夫とか外国文学とかが大江にどう受容されたのかを用いています。受容と解釈の両面でやる人は大江研究では少ないので、自分でやりたいなあと思って。
❉山本=神戸市外国語大学准教授山本明宏 高橋=福島大学准教授高橋由貴
 ここを読んで、昔やはり大江健三郎との関連で読んだ、ピエール・ガスカールの『けものたち・死者の時』(現代の文学 岩波書店)を眺めたくなり、書庫を探したが、埃をかぶるばかりでついに見つからなかった。ところが前探索して発見できなかった長谷川泉編『近代文学論争事典』(1962年 至文堂)が埃まみれで出現してびっくりした。いまAmazonの古書価格では、8800円〜14500円となっている。

brutus.jp

今は亡き内藤陳さんの書斎。こういうところから本を探すので、じつに困難を極めるのである。