『Le Père 父』観劇

 

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 2/20(水)は、池袋・東京芸術劇場シアターイーストにて、マチネー公演、フロリアン・ゼレール(Florian Zeller)作、ラディスラス・ショラー(Ladislas Chollat)演出の『Le Père 父』を観劇した。要介護の状態になっている父アンドレと、その娘のアンヌとの交錯を軸に、訪問看護師の女ローラがアンドレのたいせつな腕時計を盗んだかどうか、アンヌが父を独りにしてパリを離れ愛するピエールとロンドンで暮らすことになったのか、など、最後の場である病院の病室に至るまで、どれが事実で、どれが父アンドレの妄想もしくは娘アンヌの虚言なのか、観客にもわからないまま展開する。

 小説であれば、病室のベッドに伏してのアンドレの錯覚の回顧談というかたちになるが、演劇の場合は、あくまでも現在進行形の物語として、事態と関係が出現しているのであるから、観客の方が困惑させられる。

 シンプルな舞台空間であるが、アンヌとローラが奇しくもコートを脱ぐと、ともに深紅の服を着ているところは印象的。アンドレの悪あがきが曝け出す老いに対して、血=生命力を暗示していよう。しかしだから何なのだという疑問も生まれる。とにかくわかりづらく、時おり眠気を催す舞台であった。たまたまPCで観た、WOWOWメンバーズオンデマンドの『エレメンタリー6・ホームズ&ワトソンin NY』14話では、ジョーン・ワトソンの母親が訪ねて来て、その言動からアルツハイマー認知症を罹患し悪化しつつあることが、ジョーンに知れる。ジョーンは、自分を正常と思っている母に訪問看護師を頼むべきことをどう提案するか悩む。このあたりは、舞台の物語と重なる。

 プログラムで、平野啓一郎氏は、「父親の悲喜劇を、幻視的に、現実的に。」と題して、

 愛にも、親子愛、恋愛と、色々あるが、それらがどのようにして、同じ家という空間内で共存可能なのかという主題は、私たち自身がよく知るところである。全体を大きく包み込んでしまうような結末には固唾を呑むが、その描き方も含めて、見終わったあとに、色々と語るべきことの多い芝居で、やはり、二度、三度と見返したくなる。

 個人的には、「二度、三度と見返したく」はならないのである。

 帰路池袋駅構内の星乃珈琲店で休息、春の演劇公演チラシを点検した。スフレパンケーキを食べてみたかったが、今回はパスした。

太田緑ロランス

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若村麻由美

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