「女性嫌悪のストリンドベリ」

 19世紀末の女性史では、同時代の作家イプセンが「女性解放のイプセン」と強調され、ストリンドベリは「女性嫌悪ストリンドベリ」と称されるそうである。ストリンドベリの代表作とされる『令嬢ジュリー(Miss Julie』の舞台は、1988年東京グローブ座(当時)での、イングマル・ベルイマン演出、スウェーデン王立劇場来日公演と、1999年森下ベニサン・ピットでの、デヴィッド・ルヴォー演出、tpt公演の二つを観ている。東京グローブ座公演のパンフレットが見つからず、ルヴォー演出の公演パンフレットを読み直してみた。





 とにかくジュリー役の若村麻由美が素晴らしかった。その前のあの『テレーズ・ラカン』のチケットを取り損ねてしまっていたので、この舞台だけは見逃したくなかったのだ。演劇評論家長谷部浩氏が「日本経済新聞」1999年12/7号の劇評で書いている通りの印象をもった。
……ふたりが疲れ果てたときに、ブーツは下手前面に揃えて置かれ、父親—主人の影が大きく舞台を圧してくる。不在の権力が、いかに人間の行動を支配しているかが明らかになる。明晰で切れ味のいい演出に、キャストは最大限のちからで応えた。三人の個性が際立ち、九十年代の終わりを飾るにふさわしい傑出した作品となった。……


⦅写真は、東京台東区下町民家のアマリリス 。小川匡夫氏(全日写連)撮影。コンパクトデジカメ使用。⦆