難民問題関連用語


 墓田桂著『難民問題』(中公新書)の第1章に、難民問題関連の用語解説(pp.21〜23)がある。門外漢としても、辞書も引きつつこのあたりをしっかり知っておきたい。
◯「亡命者」という言葉がある。政治的に弾圧を受けた者が他国に保護を求める際に用いられることが多い。これは日本独特の表現であり、難民条約には登場しない。→英語のpolitical refugee、スペイン語のasiladoは、日本語の「亡命者」のニュアンスに近い。
◯refugee:フランス語のréfugiéから英語のrefugeeが生まれたのは、ユグノーイングランドに大挙して逃れたこの時期(1685年、国王ルイ14世が信教の自由を反古にして以降)のこと。a person who has been forced to leave his or her country,home,etc for political or religious reason, or because there is a war, shortage of food, etc(『OXFORD Advanced Learner's DICTIONARY』)「a refugee camp 」「economic/political refugees 」の用例がある。
◯asylum:「庇護」と訳される。難民が他国から保護を受けた状態を指す。protection given by a state to somebody who has left their own country, especially for political reasons (『OALD』)その庇護を求める人が、asylum seeker 。日本語では、「庇護希求(申請)者」と呼ばれる。庇護を提供する国は「庇護国(country of asylum )」。
exile:日本語の定訳はないが、「難民状態」と訳せる。庇護を受けているか否かにかかわらず、本国から逃れた状態を指す。
人も指す。a person who lives away from her or his own country from choice or because forced to do so(『OALD』)
migrant:「移動者」「移住者」。EUで見られるような非合法の入域(入国)者は、「非正規移動者(irregular migrant )」。正規または偽のビザを取得してEUに入域し、その後、不法滞在者(undocumented migrant )となるような事例も、広義の非正規移動(irregular migration )に含まれる。  
……一般的に「難民」問題と言われるが、その内実は複雑である。例えば、非正規移動者がEUに入域し、いずれかの国で難民申請をおこなうと「難民申請者」になる。トルコですでに難民として暫定的な保護を受けていたとしても、それがEU各国によって自動的に引き継がれるわけではない。実際のところ、EUへの移動の流れにはさまざまな背景をもった人が混在する。にもかかわらず、EUに非正規に流入する人々を一律に「難民」と称するのは全体像を歪めて伝えることになる。……(p.23)
 http://www.unhcr.or.jp/html/treaty_1951.html(「難民の地位に関する1951年の条約」)
 http://blog.livedoor.jp/wien2006/archives/52151852.html
 (「ウィーン発 『コンフィデンシャル』:日本は「金正恩政権崩壊」に備えよ」)