late bloomer


 今年は冬の寒い気候のためだろう、わが庭の花々の開花が遅れている。東京の桜の開花もようやく告げられた。さて、品種として花が咲くのが遅れてしまう花々もあり、これを「late bloomer」と呼ぶようである。
 ジェラルド・カーティス(当時)コロンビア大学教授は、「東京新聞」2003年10/5号紙上で、『「遅咲き」に寛容な社会へ』と題して述べていた。アメリカの社会は、教育制度や企業がこの「late bloomer」を歓迎しているところに、その強みがあるのに対して、日本が直面している重大な挑戦は、「late bloomer」の若者に対してもっと寛容になれるかどうかである、と教授は忠告している。
……米国の大半の大学生は、入学当初、専攻を決めてはいない。まず二年間、一般教養科目の勉強で過ごし、色んな刺激を受けた上で、三年生で専攻を決める。専攻を変えるとか、大学院で大学の専攻と異なる勉強をするのも珍しくない。大学に願書を出した時点で専攻を決めて、専攻分野を変えることが困難な日本とは、大きく異なる。
 さらに米国では大卒後、すぐに就職しないで、しばらく好きなことをやるのがごく普通だ。人によって、一年間旅をする。ずっと憧れていた町でしばらくアルバイトする。あるいは日本の片田舎で英語を教えることかもしれない。重要なのは冒険であり、今までと違う経験をすることで、自分の地平を広げる。こうした人は、米国の大学院の入学審査委員会や大企業からみれば、大学を卒業したばかりの子供よりも人生経験があるから魅力的だ。(略)
 米国は二度目、三度目のチャンスも人に与える社会だ。日本もそういう意味で若者にもっと寛容になるべきではないだろうか。……
 10年ほど前のこの提言が、学生が就活に焦らざるを得ない、いまの日本社会にも妥当することなのかわからない。ただ若者に対しての怠けることの勧めでないことは、一貫しているだろう。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家に咲く、上ヒマラヤユキノシタ(雪の下)、下寒桜。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆