アメリカの歴史学会


 1977年ルイジアナ州生まれのアメリカの歴史学者ウイスコンシン大学で博士号取得)、ジェイソン・モーガン(Jason Morgan)の『アメリカはなぜ日本を見下すのか?』(ワニブックスPLUS新書)は、行間のスペースが大きく巻末参考文献リストもない、いかにもお手軽な読み物であるが、はじめて知る情報などもあり、参考にはなる。
 寛容なカトリックと異なり、排他的・独善的なプロテスタントの一派の清教徒が英国を逃れて建国したアメリカ合衆国は、その自己中心性・独善性のいわばDNAを継承しているとの認識を前提に、アメリカの日本に対する戦前・戦後変わらない「見下した」捉え方と姿勢を論じている。中国・韓国での研究者としての滞在経験もあり、日本(早稲田大学)での法制史・法社会学の研究を踏まえて議論を展開している。それなりに説得力はあるが、日本メディアに喩えれば、〈朝日的〉アメリ歴史学会への反発・批評から〈産経的〉方向に傾いてしまったといえるだろう。
……かつては世界中の学者がアメリカやヨーロッパに渡って研究をすることが当たり前だったが、アメリカの歴史学会ではもはやマセた哲学や意味のないポストモダンの歴史的パフォーマンスしかできなくなっている。
 少なくとも歴史の研究において、現在、客観性の維持と偏見の排除という大原則を遵守しているのは日本だけだ。
 真面目に歴史学の作法を学びたい若者や、アメリカの学会の薄っぺらさに嫌気がさしている既存の歴史家が日本へ行く仕組みや組織を作れば良かろう。
 そうやって日本人の学者との交流が深まれば、虚偽と捏造にまみれた中国の学会や、超国家主義である韓国の学会と明らかに事情が異なることを痛感することになる。
 いや、必ずや日本人研究者たちの真実を追求する姿勢に尊敬の念を抱くようになるだろう。ひいてはそれが日本の歴史家による主張を理解することにつながる。……(pp.153~154 )