五木寛之氏「嫌老社会」を語る

 昨日10/12(月)BS日テレの情報番組『深層ニュース』で、作家の五木寛之氏がゲスト出演していた。日本は超高齢社会となり、高齢者の年金・医療費が財政に重くのしかかり、若者世代の負担がいっそう増しつつあるなかで、「嫌老社会」ともいうべき雰囲気が醸成されているのではないかとの五木寛之氏の状況認識を基に、今年83歳の氏に見解を述べてもらうとの企画である。
 http://www.bs4.jp/shinsou/(「BS日テレ:深層ニュース」)
 はたしていまの日本の社会に嫌老なる雰囲気が漂っているのかどうかは即断できないが、年金などの負担をめぐって世代間対立が生まれても不思議ではない経済生活の現実があることはたしかである。「若者が生きにくい社会」であるとの認識は、的を外してはいまい。将来起こる可能性が高い日本の財政破綻を考えれば、暗澹とした気持ちに陥るのは大袈裟なことではないだろう。
 五木氏は、老年世代といっても多くは、生活は楽ではなく、一握りの富裕層の生活ぶりを取りあげて一般化してはならないと述べる。首肯できる見解である。年金を受け取らないとして、社会に還元するような余裕ある層の人たちへの称賛の制度化もあってよいのではないか、と。
 とくに注目したのは、戦争体験をめぐる発言。現代の戦争はもはや、いまの老年世代が経験した時代の戦争とは形態が大きく異なっており、若い世代に戦争体験を教訓として語っても、あまり意味はないということ。同感である。しかも平和を日本人が満喫してきた間も、世界には戦争は存在しつづけていたのであって、消滅していたわけではない。現代的形態の戦争について、むしろ若者世代から学ぶ場合もあるだろう。容姿衰えても、感性は決して摩滅していない五木寛之氏は、しかし、無理に若々しく生きようとする生き方には否定的である。そこが、CMの杏さんではないが、「ニクいね、五木寛之センセイ」。
……「心に明日を信じられるものがあれば、いつでも青春だ」などという言葉があります。たしかに老いがプラスに働くこともあるでしょうが、日々の苦痛や不安のほうが勝るはずです。そして周囲からの孤立感などが、さらに広がっていく。
 ボランティアなどを通じて社会と、また、若い人たちと交流を深めていくべきだという人もいますが、現実にはなかなか難しいことです。
 あらゆるものごとは時間とともに劣化し、イレギュラーになっていきます。それは世界の最も大事な真実だといってもいいでしょう。
 人間の心も体も、例外ではありません。鉄が錆びるように、人間もまた錆びていくのです。私たちには、その状態を素直に受け入れていく以外、方法はありません。
「四百四病」の言葉どおり、人間は病気の塊みたいなもので、それをだましだまし取り繕って生きているのです。……⦅『なるだけ医者に頼らず生きるために私が実践している100の習慣』(中経出版)pp.193~194 ⦆