ローザンヌ&コンテンポラリーダンス

ローザンヌ国際バレエコンクール」で、神奈川県私立和光高校2年の菅井円加(まどか)さんが優勝したとのことである。古典のみならずコンテンポラリーダンスにも卓越した技量があり、そのジャンルでも将来に意欲があるとのこと。頼もしい。さて国内では、劇団「イキウメ」主宰の演出家、前川知大さんが、「第19回読売演劇大賞」の大賞・最優秀演出家賞に選ばれたそうである。「ローザンヌコンテンポラリーダンス前川知大」の三つを(無理矢理)keywordにすれば、かつてわがmixi日記に記載の、観劇記が思い起こされる。この機会に再録しておこう。 

……さすがに連夜の遠出・鑑賞は疲れる。昨晩は、東京「新国立劇場」小劇場での、「Noism」のダンス公演『ZONE〜陽炎・稲妻・水の月』を鑑賞した。昨年話題になった『NINA』を見逃していたので、今回の東京公演は、素早くチケット確保。なんと最前列の端という、わが理想の席であった。
 いまをときめく舞台演出家の一人前川知大については、この5月に赤坂RED/THEATERでの「イキウメ」公演『関数ドミノ』を観たばかり。秋山景杜役のともさと衣さんが、『四谷怪談』『授業』につづき、またまた殺される役で驚きつつ楽しんだ。
 さて今回の『Noism」の演出・振付は、金森穣、新潟市民文化会館舞踊部門芸術監督の職にあり、かつてローザンヌにていまは亡きモーリス・ベジャールに師事した、現在コンテンポラリーダンスの世界で最も注目されている、舞踊家・演出振付家の一人である。舞台空間の構成が、田根剛、照明が伊藤雅一。ダンスの緊張感と変幻自在にも感動するが、空間と照明のみごとさにも陶酔する。この観るこちらに内なる震えをもたらすダンサーの身体の動きおよび舞台のシンプルにしてかつ奥深い仕掛けは、詩的言語をもってでないと、表現できないだろう。
   http://www.noism.jp/top/noism_ja.html

 コンテンポラリーダンスの歴史的定義はさておき、個人的には、日本人ダンサー公演に限っても、木佐貫邦子(俳優座劇場)、上村なおか(ベニサンピット)、白河直子(新宿スペース・ゼロ、王子ホールなど)、YOUKA(王子ホール)、森山開次王子ホール)その他観ているほうだろう。
 この3部構成の舞台で、第1部(academic)は、Ballet Mistress井関佐和子以下ダンサーの専門的身体の動きを主眼としているので、古典バレエの動きに関する実践的素養がないとわからないところだ。しかし、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・パルティータ」の音楽に伴われて、心地よい興奮を覚える。第2部(nomadic)は、能楽「序・破・急」の「破」にはあたろう、ダンサーたちは色彩豊かなエスニックな衣装をまとって、プリミティブな身体の動きを主眼に、中島みゆきプレスリー・ピアフもあれば、バッハ・シューベルトもあり、インドネシアの土俗的な曲もある多彩な音楽に誘われながら、ダンスパフォーマンスを展開する。酔わされる。
 第3部(psychic)では、4人の男女の中、ひとりのダンサー(中野綾子)が身体の痙攣を表現しつづける。果たして憑依があって、精神性が獲得されたのか、不明のまま演出家の催眠術から醒まされて終演。一夜の夢、不可解でかつ衝撃的な楽しいときを過ごせた。……(2009年6/19 記)