世襲カリスマ

 北朝鮮の労働者党代表者会で、三男金正恩キム・ジョンウン)氏が、次期総書記の位につく路線が明確になったとの報道である.世襲カリスマの三代目であるから、「売り家と唐様で書く三代目」とからかいたくなるところだが、そんな長閑な(?)話ではあるまい.北朝鮮統治構造の不安定化と、日朝関係の緊迫化をもたらす要因ともなる可能性が考えられるのだ.真正のカリスマについて、マックス・ウェーバーの説明にあたってみた。青木書店版「現代社会学大系」中の第5巻『ウェーバー社会学論集』所収の「カリスマ的支配とその変形」(濱島朗訳)である。

 カリスマ的首長の権力は、被支配者たちがかれの個人的な使命をただ事実上「承認」する、ということにもとづいている。このような承認は、事情しだいではもっと能動的な性質をもつこともあれば、もっと受動的な性質をもつこともあるが、とにかく、そうした承認があたえられる源泉は、非凡なもの、前代未聞なもの、規則や伝統とはおよそ無縁ななもの、それゆえ神々しいとみなされたものにたいする敬虔な帰依にある.そして、この敬虔な帰依は、苦難と熱狂から生まれてくるものである.そういうわけで、真正カリスマ的な支配は、抽象的な法規や行政規則にも「形式的」な判決にもなじまない.この世のものともおもえない恩寵や神のような英雄的力についての極度に個人的な体験が具体的なかたちをとって発露したもの、——それが、真正カリスマ的な支配を律する「客観的」法なのである.(同書p.377)

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のケイトウ(鶏頭)。小川匡夫氏(全日写連)撮影.⦆