「J亭・立川談笑独演会」鑑賞

 昨晩(9/24)は、東京虎ノ門JT会館2F・JTアートホール アフィニスにて、「立川談笑独演会」を聴いた.演目は、「こんにゃく問答」、「巌流島」、「お直し」の三題.「巌流島」と「お直し」の間には、休憩が入った.落語愛好会のメンバー7人のお仲間に入れてもらっての今回の参加、終演後の飲み会もあり、愉快な一夜となった.しかし会場は音楽ホールということもあるのか、落語の音声は後部座席まで届かず、言葉がはっきり聞こえない場面が少なくなかった.「巌流島」は、渡し舟での屑屋の「くずーい」と叫ぶ、そして客の一人の「探そうたって自慢じゃないが俺の家は小さいから分からないぞ!」と啖呵を切る二つのところが最大の笑いどころ(立川志らく『全身落語家読本』新潮選書)なのに、よく聞こえず、むしろ講釈師の「藻くずとなりにけり」の声のほうが笑えた.
「こんにゃく問答」は、中東のお噺に作り替えられ、志らく師匠の「シネマ落語」のいわば反対方向.寺男になった蒟蒻屋と偽僧侶が、イスラム教の寺守とイマーム(導師)になっているが、モスクは祈りの場であって、聖職者が常在する空間ではないので、仏教寺院に擬するのは少し無理があろう.ラマダーン断食月)だとかアジャーン(祈りへの誘導)だとか、いろいろ雰囲気を出すのには巧みな工夫がされている.問答中の仏教の五戒をイスラム教の五柱(義務)に置き換えたところなどは、秀逸、感心した.
「お直し」は、たっぷり間をとりながらの噺しの運びで、しっとりした男女の機微を表現、退屈になりそうな微妙なメロディーで聴かせた.元花魁の年増女が、吉原羅生門河岸の蹴転(けころ)に身を落としてでも、嬾惰な夫の元牛太郎(ぎゅう=客引きの男衆)と生活を再建しようとするお噺.キャバレーの「延長」にあたる、「お直し」の言葉が下げに至るまでのキーワードで、庶民の哀感と切なさの思いが、おとぼけのオブラートに包まれて哀しくかつ可笑しかった.立川一門では、AKB48風には、やはりわが「推しメン」は立川志らく師匠である.

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のピンクノウゼンカズラ(Podranea ricasolian・南アフリカ原産)。小川匡夫氏(全日写連)撮影.⦆