立川志らく独演会を聴く



 一昨日2/26(金)の夜は、東京・銀座ブロッサム中央会館にて、立川志らく独演会を聴いた。S氏主宰の落語研究会月例会へのひさしぶりの参加。参加者は10名、寒さまだ居残り、階段の多いメトロ東銀座駅を利用するのも、膝痛の身には楽ではない。しかし楽しく、リズムと流れのよい高座であった。
 前座の立川らく次は、「金の大黒」。志らく師匠の『全身落語家読本』(新潮選書)によれば、「どん底」の貧乏こそが、このような長屋の連中が活躍する噺のポイントとのこと。羽織を使い回しする住民の行動が可笑しく面白い。テンポよく、よい前座。酒とご馳走にありつけ、もはや不要となった羽織は、「いいよ、どぶに捨てちゃえ」。志らく師匠が、「この噺の最高に面白いくすぐり」としている。なるほど。
居残り佐平次」と仲入り後の「品川心中」の番組。マクラで語った、川島雄三監督の映画『幕末太陽傅』が主としてその物語構成の題材として採り上げた、品川の遊郭が舞台の落語2作品。この映画なぜか観る機会を逸していて、競馬で馬券を的中させて(今年まだ的中なし!)、デジタル修復版DVDを入手したいものである。
 http://www.nikkatsu.com/bakumatsu/(「映画『幕末太陽傅』デジタル修復版・公式サイト」)

 http://ginjo.fc2web.com/005inokori/sinagawa.htm
 (『落語「居残り佐平次」&「品川心中」の舞台を歩く』) 
 映画の佐平次が結核を病んでいるとの設定について、立川談志は、「病気なんて関係ない。佐平次は居残りをやりたい奴なんだ」と言って、それを否定していた、と志らく師匠が同書で述べている。「居残りをやりたい奴」という批評が面白い。その通りなのだろう。
 http://www.news-postseven.com/archives/20111129_72601.html(「立川談志のベスト名席:居残り佐平次」)
 ここで広瀬和生氏が評している「家元が作品を演じるということではなく、立川談志という身体を借りて、高座の上で極めていい加減な野郎が暴れまくる痛快さ。これが談志落語の神髄の一つ」との、談志が一昨晩の志らくに憑依したのだろう。まさに、「いい加減な野郎が暴れまく」っていた印象であった。談志のサゲの「裏を返す」という遊郭用語は、もはや知識として死滅しているし、志らくのサゲが談志のそれと違っているのは当然である。遊女たちにモテモテの、粋な佐平次というイメージで終らせたのであった。
「品川心中」は、心中の場面など、ニキータ・ミハルコフ監督作品『機械じかけのピアノのための未完成の戯曲』(原作『プラトーノフ』)を思い出させた。チェーホフ劇と落語には親近性があるのだ。 
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20100617/1276763302(「チェーホフ劇はどこで笑うのか」) 
 終演後、歌舞伎座近くの越前若狭・鯖街道という店で、検討会・呑み会。若狭の〆鯖は、たしかに美味しかった。個室の雰囲気のいいこの店に居残りしたくても、11時過ぎてしまい解散。新橋駅から総武線快速グリーン車でなんとか帰宅。



 http://news.nifty.com/cs/entame/gamedetail/crankin-4171904/1.htm
        (「立川志らくガンダム落語披露」)