後生畏るべし—開成二冠

 9/3(金)日本テレビ放送の「第30回全国高校生クイズ選手権」。決勝は、埼玉県立浦和高校vs.東京開成高校。昨年は決勝の手前で敗退した開成高校トリオが今年は優勝.3年生になったイケメン田村正資クンは計算ミス以外は完璧な解答、脇のステレオタイプ的秀才風の二人を従えて、順当な結果と言えた.とくに経済用語関係で、「クラウディングアウト」を即答したのには驚いた.こちらは経済学に弱いのであるが、現代経済政策で実行可能な選択肢を考えるとき、この言葉を知らなければ話にならないだろう.高校生で知っているということが驚きなのである.
 http://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51314565.html (池田信夫ブログ・09年11/18) 
 http://sinsan.blog.smatch.jp/blog/2010/09/post-129c.html (辛酸なめ子の女一人マンション)


 9/5(日)BS日テレ放送「全国俳句甲子園」。決勝は、沖縄県首里高校vs.東京開成高校.4人目で開成の優勝が決まったが、5人目の首里高校の句は感動的で佳作.「陶枕の全(まった)き白に小さき罅(ひび)」の完成度にも脱帽するが、句の作者開成高の三村一貴クンは、批評のコメントがむしろ面白い.音楽ライブでの即興的なMCの魅力を感じさせる.表現のステレオタイプ性を指摘し、自己相対化の視点の欠落を撃つ批評の語りはみごとである.
 北海道在住の俳人で、「俳句甲子園」の地区予選審査員も担当している五十嵐秀彦氏は、08年8月のブログで、開成の福田・加藤・三村・小野クンらの作品について、『まずはそのレベルの高さに「アッパレ」の賛辞を献上したい』とした上で、述べている.

『ここにある句は、どれも佳句であり、それに対してこうすればもっと良くなる的な指摘はとてもする気になれない完成度だ。
 これらの句を句会に出せばそれなりの評価がされるだろう。作者が高校生と分からずとも点の入る句だと思う。ただ、何だろうこの虚しさは。はっきり言うと、このまま彼らがこの作風で句境を深めていけるとは、ぼくにはとても思えぬのだ。非常によくできている句の裏面に、べったりと貼りついた「俳句的常識」は、このままでは詩人にとって致命的な欠陥に成ると思う。それは今週号の開成高校の4人に共通して言えることである。しかし、これほど出来てしまった句を作れる彼らに、ではどうしろと言う気はない。
このまま進んでみるしかないと思う。このまま進んで、壁にぶち当たってほしい。必ずぶち当たるはずだ。
そこから初めて彼らと俳句との格闘が始まるのだと思う。』
   http://blog.livedoor.jp/mumon1/archives/51036621.html
 熊本信愛女学院高校宮川夏実さんの「へその緒のねじれて朝顔は青い」、愛媛県立松山中央高校寺田凛さんの「子宮といふ奇天烈なもの夏帽子」は、女の生理を通過させた表現で、ギクッとさせられた。少女のなかにはすでに女が宿っているのだ.今さらながら思い知らされた.
 「俳句甲子園」については、当ブログでもとりあげたことがある.これらの才能らが凡庸な表現者になってしまうかどうかは、これから遭遇するであろう人生と表現の壁に、いかに真摯に向き合うかどうかにかかっているだろう.
 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20100404/1270356369(「子規俳句の血脈」) 
 http://simmel20.hatenablog.com/entry/20110509/1304930080(『「開成学園大運動会」見物記』)

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町で目に留まったツマグロヒョウモン。小川匡夫氏(全日写連)撮影.⦆