猛暑のなかの旅

 8月の終わりの4日間、広島・京都・奈良をまわってきた.広島は、用事での訪問.日中の猛暑のなか、西日本の街を歩くのは酷であった.たえず木陰・日陰を窺い、視線は涼しそうな喫茶店を探してしまう.世界遺産も国宝も、もはや何ほどか、といった感じであった.
 広島の紺青の空は、不思議な明るさであった.「原爆ドーム」は、現代における鎮魂の寺であろう.子ども二人の母子が、廃墟の建物を見上げているのが印象的であった.太田川は変わらず美しく、広電停留所の背後の「市民球場」は役割を終え、すでに名所旧跡と化していた.
 夜は、広島駅前ビルの居酒屋「さかな市場」で飲んだ.とれたてイトヨリ(ダイ)と魚の味噌汁が美味であった.

 京都の第1日目、ホテルのレストランのディナーは、
●焼きハモと冬瓜・冷たいジュレ添え 酢漬けしたパパイヤと生ハムのアンサンブル
●スープ
●スズキのこんがりオーブン焼きと才巻き海老 京茄子と野菜のティアン さわやかなトマトクーリーと2種のオリーブ 
●牛フィレ肉のグリエ・万願寺とうがらしの和風マリネと九条ネギのフリットを添えて・みぞれおろしソース(2日目。1日目はサーロインのステーキ)
●パン
●紅茶(ミルクティー
 夏の京都でやっとハモを食べられた満足感を覚えた.第2日目は省略.

 奈良は、近鉄奈良から東大寺へ。大仏(毘盧舎那仏)拝観もそこそこ、今回の関心は、その両脇下の花瓶、そこに止まっている各2頭の蝶(の彫り物)にあった.東京両国江戸東京博物館での「大昆虫博」において、かの奥本大三郎氏が「虫の蘊蓄」なる解説で、東大寺大仏殿の蝶の脚は8本であることに、注意を促していたのだ.氏は、そのかみ突然変異の蝶を知って作ったのではないかとの仮説を楽しんでいる.なるほど面白い、たしかにどれも8本の脚であった.


 昔立寄りおいしくいただいた、かまど炊きご飯の「下下味(かがみ)亭」はいまはその子息が店主のカフェ、ここでケーキセットを食べたかったが、あいにく休業.残念であった.

 大和西大寺駅に降りて、平城宮跡に建てられた大極殿まで歩くも、あまりの暑さ(それほど離れていない一休寺のある京田辺は、当日38°で全国1の猛暑)、正面に立って引き返した.「せっかく来たんだ、中を観てみよう」と歩いて行った婆さんには脱帽した.

 最終日京都では、来年法然上人「800年大遠忌(おんき)」を迎える知恩院を参拝.はじめて、北門(黒門)から入り、方丈庭園を拝観.人が来なくて、汗を拭いつつ静寂を満喫.



 北門出たところで、若い一人旅らしいヨーロッパ系の女性と遭遇.「コンニチワ」と日本語で挨拶。彼女も嬉しそうに「コンニチワ」と会釈、恐縮した.いい気になって青蓮院に向かうと、今度は老夫婦、英語で知恩院へどう行くのか訊いてきた、とっさの英語で教えた.危うし危うし.この門跡寺院の門前の大楠(クスノキ)を観るのもひさしぶりだった.青蓮院の庭の苔は茶色く枯れていた.

 京都駅でのランチは、九条口にある小川珈琲直営のカフェ「潤」にて、ホットケーキセットをいただいた。申し分なし.かつて入った寺町通三条上ルの「スマート珈琲店」の味とともに思い出に残るだろう。前日食べた「中村藤吉京都駅店」のうじきんソフト(抹茶)もお薦めの一品だ.