新自由主義とリバタリアニズム



 政策理念において福祉・環境を重視している民主党政権下であるからだろう、「小さな政府」論を前提に、現政権および、その応援団とみなすwhat you call〈バカ左翼〉批判もしくは罵倒の議論が少なくない.政治と経済に関しては、勉強不足で論評できる立場ではない(選挙では利己的に判断)が、議論の整理というより、用語の整理をしておきたい.
 幸いわが座右に橋本努北海道大学准教授の『経済倫理=あなたは、なに主義?』(講談社選書メチエ)があり、この本の第1章・第2章で、経済倫理をめぐる現代の八つの代表的立場について解説されている.「小さな政府」をよしとする立場で紛らわしいのが、新自由主義ネオリベラリズム)とリバタリアニズムだろう。新保守主義ネオコン)も重なるところがあるようだが、特殊アメリカ的な内容が主であり省略.
 手持ちの英和辞書(『O-LEX』英和辞典)では、「liberalism」=(政治・経済上の)自由主義、『libertarianism」=自由の擁護者の「主義」とある。辞書としてはこんなところであろう。
ネオリベラリズム」の「ネオ」とは、「後」の意味で、「福祉国家の後の段階」を指しているのだそうだ.具体的政策としては、公的組織の民営化、規制の緩和・撤廃、外国人の株の売買と投資の奨励、公的社会保障の廃止などを実行しようとする立場である.新自由主義が「秩序と成長」のために「自由」を求めるのに対し、一方のリバタリアニズムは、あくまでも「原理的な自由」を求める立場なのだ。新自由主義福祉国家を容認し、市場が活性化するのであれば、政府支出が多くなることもかまわないとする場合もある.対して本来のリバタリアニズムは、たとえ経済システムが衰退しようとも個人の自由を擁護する社会を望む.
「ところが、実際にリバタリアニズムに共鳴しているビジネスマンたちは、経済的自由によって富が増大するという、帰結主義の論理を支持していることが多い.しかし経済の帰結がよくなる範囲で自由を求める立場は、真のリバタリアンとはいえまい。その発想はむしろ、新自由主義新保守主義などの立場に分類されるだろう.」(同書84頁)
 なるほど。労働力市場と情報商品市場の自由化・流動化による、成長戦略らしきものを主張している場合は、本来のリバタリアニズムではないということだ。むろんこれはたんにラベル(レッテル)をどう貼るかという問題である.
 

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のムスカリの花.小川匡夫氏(全日写連)撮影⦆