新春浅草歌舞伎第一部観劇(1/10 浅草公会堂):なるほど中村米吉(八重垣姫&お富&芸者)はいい


            (「本朝廿四孝」十種香)


            (「与話情浮名横櫛」源氏店)


 ⦅『神楽諷雲井曲毬(かぐらうたくもいのきょくまり)どんつく』⦆

 某社の特別招待割引でしかも抽選による座席配置なので、後ろから2番目で通路から4番目という座席での観劇。左耳難聴で近視、右側のほぼ最後列だから、さらに閉所恐怖症のこちらとしては最悪の座席。幸い右の2席が空席で余裕ができ、それは助かった。中村歌昇播磨屋)のお年玉(年頭挨拶)が意外と聴こえたので、案外だいじょうぶかと思えば、「本朝廿四孝」で最初に登場した中村橋之助(蓑作実は武田勝頼)の台詞が聴こえない。「十種香」の展開はわかっているので、動きで鑑賞するほかなく、時々耳に入ってくる台詞を頼りに味わった。じつは事前に、有名な筋書収集家栢莚(はくえん❉2代目市川團十郎の俳号)さんのブログで観劇記を読んで予習してあったので、それほど困らなかった。

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……この様に熊谷陣屋(❉第二部上演)の巳之助ほど優れた出来栄えの人はいませんでしたが、米吉の八重垣姫はこれから回数を重ねて行けば何れ持ち役になるであろう素質は感じられた他、熊谷陣屋の出来から少々不安であった歌昇、新悟もまずまずといった感じでしたので全体としては65~70点くらいの完成度でした。……
……いくら3年間手付かずという設定があるとは言え妾という境遇や与三郎が思わず手を出してしまう様な成熟した女性の色気が米吉の台詞廻しや所作からはどうしても感じられませんでした。(その辺は児太郎の方がありました)……
 (左耳難聴で)台詞が聴こえない分、まさに赤姫の赤の衣装の豪華さが目立った八重垣姫の、中村米吉、よかった。「切られ与三」でのお富は、たしかに「与三郎が思わず手を出してしまう様な成熟した女性の色気が米吉の台詞廻しや所作からはどうしても感じられません」かも。なにせ昨年4月の『鳳凰祭四月大歌舞伎』の「切られ与三」で、坂東玉三郎片岡仁左衛門のお富&与三郎の舞台を観ているので、玉三郎の匂い立つようなエロティシズムと比較してしまうとまずい。これからなのだろう。最後「どんつく」での芸者の踊りなど、艶やかで魅せられた。

 

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……蝙蝠安と言えば上述の通り戦前に右に出る者がいないと三絶の一角を担った四代目松助がおり、父親が六代目松助である事から松也は将来は松助を継げる資格がある立場ですが今回の蝙蝠安と宗五郎(❉第二部「魚屋宗五郎」)を見た後ではこのまま大過なく順調に進んで行けば将来松助を名乗っても行けるのではないかと言う期待すら持てました。……
 尾上松也音羽屋)の実力は周知の事、蝙蝠安のチンピラぶりも安心して観ていられた。ともあれ特別招待割引のチケットなんぞは今後は手を出さないことと、思い知ったのであった。

 売店で購入したたなかの柿の葉すしを持って帰って、自宅で食べた。ノーマスクの人も喋りまくっている会場座席ではとても食べる気にはならず、持ち帰った次第。ひさしぶりの柿の葉すし、鯖、真鯛、鮭の3種類、美味しかった。