森谷真理&大西宇宙『Viva Verdi ! Ⅲ 後期』(6/9 トッパンホール)を聴く

【アンコール曲】
大西宇宙(バリトン):『オテッロ』第1幕「乾杯の歌〈さあ乾杯だ〉」(イアーゴ)
森谷真理(ソプラノ):シャルパンティエ『ルイーズ』第3幕「その日から」(ルイーズ)

 ジュゼッペ・ヴェルディの初期オペラ作品中のアリアを森谷真理が歌う『Viva Verdi ! 』を初回(2018年)として、バリトンの大西宇宙(たかおき)が加わって、中期の傑作作品を歌う『Viva Verdi ! Ⅱ 中期』が2022年に催され、そして後期傑作選の『Viva Verdi ! Ⅲ 後期』が最終回として実現した。この企画を聴くのは今回が初めて。森谷真理と大西宇宙のアリア名曲を揃えたが、『アイーダ』第3幕の「ああ、お父様!」、アイーダ(ソプラノ)と(実はエチオピア王の)アモナズロ(バリトン)のデュエット1曲もあり、愉しい。
 オペラ鑑賞の個人的分類ではこちらは、たしかな耳をもつ音楽派ではなく文学・演劇派なので、ドラマ展開の流れや文脈性がないと、どうもアリア一つにすぐには没入できないところがある。歌詞の日本語訳字幕が映し出されないのも通常のオペラ公演とは違う。プログラムに、各アリア前後の状況かつ聴きどころについて解説が記載されてあるのだが、会場のトッパンホール初めてのため、(東西線飯田橋駅からけっこう遠く)たどり着くのに難儀し余裕がなくなっていたのだった。しかし、声の表現力のすばらしさは理解、感動してしまう。『運命の力』では、大西→森谷→大西の順番で、第3幕大西(ドン・カルロ)の「この中に私の運命がある」の前に、第4幕森谷(レオノーラ)の「神よ、平和を与えたまえ」が歌われる。圧倒された。
 プログラムの変更で後半最初となった、『オテッロ』。第2幕大西(イアーゴ)の「イアーゴのクレド(❉信条)〜無慈悲な神の命ずるままに」と、第4幕森谷(デスデモナ)の「泣きぬれて野のはてにひとり(柳の歌)〜アヴェ・マリア」は絶品。河原忠之のピアノに煽られた大西宇宙の「ヴェルディバリトン」の力も聴き惚れてしまうが、森谷真理のソプラノには身が震える。
……武将の若き妻デスデモナは、悪漢イアーゴの嘘を信じ込んだ夫が自分の貞操を疑っていると気付かぬまま、この長大な一場を切々と歌い上げる。ここでは、愛するオテッロの変わりように苦しみ、死を予感しつつ祈る彼女の哀しい心根を、森谷の鮮烈なフレージングと声音の繊細な色付けから聴きとって頂こう。絶唱にご期待あれ。(プログラム)
 唯一喜劇の『ファルスタッフ』の第2幕、大西(フォード)は軽快に、そして最後が、『ドン・カルロ』。大西(ロドリーゴ)と森谷(エリザベッタ)の声はいよいよ深まり終演。Bravo! Brava!  この秋は、東京文化会館大ホールで、ロッテ・デ・ベア演出、レオナルド・シーニ指揮の『ドン・カルロ』が上演される。10/14(土)のチケットを買ってある。これも愉しみになってきた。
 帰宅したのが夜遅く、晩御飯はファミマの冷凍マルゲリータをいただいた。なかなかの味。

                     どちらのチケットも予約してある。

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