courrier.jp クーリエ・ジャポンは会員登録(無料&有料)すれば、『シニカル理性批判』(高田玉樹訳 ミネルヴァ書房)の著者ペーター・スローターダイク(Peter Sloterdijk)のような世界的哲学者のインタビュー記事が読めるのでありがたい。
そのインタビュー記事で、スローターダイクさんは、現代において「ロシアと中国のライフスタイルに魅力的なものは何もありません」と語り、「ヨーロッパの退廃ぶりさえ、世界に存在する生き方として最も魅力的なものであり、それに次ぐのがアメリカンドリームの残り物です。それは崩壊し、人々を非常に幻滅させてきましたが、今なお何かが残っているのです」としている。「中国のライフスタイル」に関連して、最近面白いことを知った。
澁澤龍彥のエッセー集の中でも間違いなく五指に入る傑作『思考の紋章学』の中国語訳が届く! 装丁・デザインは松田行正の感覚に近い。これ実は機関精神史4号に「中国の澁澤龍彦」論を寄稿してくれた才人・劉佳寧さんの翻訳で、Godivaのチョコといっしょにヴァレンタイン・プレゼントに賜る。深謝!🐉 https://t.co/XpzOjrxVwb pic.twitter.com/Bdn71p1rM8
— 後藤護 𝕲𝖔𝖙𝖍-𝕺 𝕸𝖆𝖒𝖔𝖗𝖚 (@pantryboy) 2022年2月16日
「学魔」直系の後藤護氏によれば、むろん一部の間でであろうが、いま中国で澁澤龍彦の著作が次々と翻訳されブームになっているとのことである。どういうところに共鳴しているのか情弱のこちらにはわかりかねるが、浅羽通明氏の『澁澤龍彦の時代』(青弓社 1993年初版)が補助線になるかもしれない。
また当時から80年代の始めにかけて、新しい世代の、殊に女性ファンの急増により、澁澤龍彦の著作は一種ファンタジックなアイドルとして、ごく普通に消費されるまでに到っていた。高度成長期が終わり、人並みを購入しようとする大衆から、個性や違いを購おうとする少衆や分衆へターゲットを移したマーケッティングの新時代にあって、「異端の文学者」というイメージは、もはや「気取る」にふさわしいブランドの一つとみなされつつあった。(pp.11~12)