【訃報】作家・須永朝彦氏が一昨日惜しくも御逝去。小社では『須永朝彦小説全集』『日本古典文学幻想コレクション』を始め、『日本幻想文学集成』『書物の王国』『鏡花コレクション』等の編纂に当たりその深い学識を以て多大なる御尽力を戴きました。御霊の安らかならんこと、心より祈念申し上げます。
— 国書刊行会 (@KokushoKankokai) 2021年5月17日
郡司正勝門下では、アカデミズムの世界では、鶴屋南北研究の古井戸秀夫東京大学名誉教授が、非アカデミズムの世界では須永朝彦氏が世の知るところであろう。
こちらは須永朝彦の熱心な読者ではなく、所蔵の本も吸血鬼小説集『就眠儀式』(名著刊行會新装版)の著者直筆署名入りが1冊あるのみである。
個人的にその名とともに記憶されているのは、1983(昭和58)年2月松竹製作、日生劇場公演の、エウリピデス作、須永朝彦訳・台本、栗山昌良演出、坂東玉三郎主演の『メディア』の舞台である。
『メディア』公演プログラムに、須永朝彦氏が「伝説・戯曲・台本」と題して寄稿している。
戯曲
メディアの物語を浄瑠璃及び歌舞伎の狂言に準(なぞら)えれば、《アルゴー遠征譚》が世界であり、《金羊毛皮》は差詰(さしづめ)お家の重宝というところであろう。そして、エウリピデスの悲劇『メディア』は、浄瑠璃の段物の最後の部分だけを扱ったようなものである。元来、ギリシャ悲劇は、神話に取材した長い物語の最後の場面を上演するものであり、観客は先行する複雑な筋をほぼ知っていたのである。
台本
このたびの『メディア』上演は、玉三郎さんの提案に成る。二十代の頃からギリシャ悲劇を、それも『メディア』を手がけたいと念じ、演ずるに適(ふさ)わしい年齢と時機を待っておられた由である。従って、飽くまでもギリシャ悲劇として上演したいという御希望で、それは演出の栗山先生も同様のお考えのごとく拝察された。上演台本の作成を引受けるに当って、ギリシャ文学の専門家ではない私は、何事もお二人のご意向に沿って仕事を進めようと腹を括った。御注文は、四つ、まずこの悲劇を裏切られた女の愛のドラマと捉える事、次に「生硬な飜訳調を避けて」「格調高く」ということ、さらに唱舞隊(コロス)を文字通り歌わせること、そして二幕に仕立てる事であった。第二の台詞の文体についての御注文は考えようによっては至難の技である。
【學魔、須永朝彦氏追悼】
— 後藤護 𝕲𝖔𝖙𝖍-𝕺 𝕸𝖆𝖒𝖔𝖗𝖚 (@pantryboy) 2021年5月22日
高山宏大人による「ひとつ年上の天才」須永朝彦氏の追悼文届く。「結局、荒俣も由良も「幻想」と言い乍ら「お耽美」の方には行かなかったよね、俺もおんなじ。本当に芯に耽美に殉じたのが須永で、あの人にだけはコンプレックスを持ってきた」 pic.twitter.com/SD1n54xxna