昨日9/10(金)は、歌舞伎座にて「9月大歌舞伎」公演第3部(午後6時開演)の、四世南北作『東海道四谷怪談』を観てきた。仁左衛門&玉三郎共演の演し物とあって、(新型コロナウイルス感染症対策で予め空席を一定割合設けてもいることもあり)早くからチケットは完売、1日申し込みが遅れたため、2F1等席になってしまった。近視でやや難聴なので、1Fの10列目まででないと十分愉しめない。利用する快速電車の時刻を調べておいたのに、ブログ更新その他で時間を忘れ、慌てて家を飛び出したため、オペラグラスを忘れるという失態を演じてしまった。はじめ役者の表情が読み取れず声も聞き取りにくかったが、馴れると何とか鑑賞できるようになった。
二幕目「本所砂村隠亡堀の場」で、悪党民谷伊右衛門(片岡仁左衛門)が言う台詞、(首を切られても動いている鰻のごとく)「首が飛んでも、動いてみせるわ」と啖呵を切るところがちゃんと聴けたので大満足。「みせるわ」は意外とあっさり締めるので驚いた。
この場の最後、直助権兵衛(尾上松緑)・佐藤与茂七(中村橋之助)・小平女房お花(坂東玉三郎)・民谷伊右衛門(片岡仁左衛門)が黙って探り合いをする「だんまり」、その中で4人が肩に手を置いて並ぶ絵柄は、西洋中世の「死の舞踏」を思わせて面白かった。
現代劇の舞台でも過去、『東海道四谷怪談』は観ている。
⃝俳優座創立20周年記念公演、1964年11月、都市センターホールにて、小沢栄太郎演出、通し狂言4幕12場『東海道四谷怪談』。✼南北研究の大家、古井戸秀夫東京大学名誉教授は、東京浅草育ちでわが高校の後輩にあたるが、南北に興味をもったきっかけが、この公演(公演年は違う)だったとのこと。
⃝文学座公演、1978年12月、渋谷・東横劇場にて、宮本研作、木村光一演出『東海道おらんだ怪談』。南北の物語の中に劇中劇として『四谷怪談』が挿入される構成。南北・民谷伊右衛門役が北村和夫、水茶屋の女お万・お岩役が太地喜和子。
⃝シアターX(カイ)プロデュース公演、2005年8月、両国・シアターXにて、(スイス生まれで、ドイツを拠点にした世界的演劇・オペラ演出家の)ヨッシ・ヴィーラー演出『四谷怪談』。時代を現代に設定、ひとりの女(吉行和子)が語り部となって、地下鉄ホームを舞台にした、幻想の民谷伊右衛門とお岩の物語。登場人物がみな現代のファッション、この物語の普遍性を追求している。この舞台を契機に、お梅役のともさと衣さんのファンになった。なおこの作品は、日独共同創造演劇プロジェクトとして企画され、翌年海外で上演されている。