ベッリーニ作曲、バルバラ・リュック演出『夢遊病の女』(10/9 新国立劇場オペラパレス)観劇

 

 10/9(水)新国立劇場オペラパレスにて、バルバラ・リュック演出、マウリツィオ・ベニーニ指揮、ヴィンチェンツォ・ベッリーニ作曲の『夢遊病の女』を観劇。原作は、バレエ・パントマイム(パントミム)の『夢遊病の女』で、「幅広い音域に加え、ドラマティックな表現ができる」ソプラノ歌手ジュディッタ・パスタ、相手役が当時「圧倒的な人気を誇っていた」テノール歌手ジョヴァンニ・バッティスタ・ルビーニ、1833年の初演の舞台、歌手たちも聴衆たちも涙して、成功を収めた。
 今回、アミーナ役のソプラノが、この7月にシュトゥットガルト州立歌劇場でこの役デビューし大成功を収めた(声も姿も美しい)クラウディア・ムスキオ、相手役テノールのエルヴィーが、アントニーノ・シラグーザ。二人の声の交錯には痺れる。ロドルフォ公爵(妻屋秀和バス)、テレーザ(谷口睦美メゾソプラノ)、リーザ(伊藤晴ソプラノ)、アレッシオ(近藤圭バリトン)、公証人(渡辺正テノール)らも魅力的でいい声。新国立劇場合唱団(三澤洋史指揮)の村人たちの声も、時代を超えて変わらぬ民衆の人物評価と感情の揺れをみごとにかつ美しく表現していた。アミーナの心象風景を表現したダンサー10人の動きもすばらしかった。マウリツィオ・ベニーニ指揮の東京フィルハーモニー交響楽団の演奏は、管楽器の音が心に沁みる。感動。
 互いに愛を誓い合った二人の関係が、結婚式の前夜に夢遊病の花嫁がたまたま恋敵の養母の経営する宿に泊まったロドルフォ公爵の寝床に紛れ込んで、破談となってしまう物語。最終的には誤解が解けて(表面的には)ハッピーエンドで幕なのであるが、バルバラ・リュック演出では、自分の愛の真実を信じきれなかった相手の男=エルヴィーとそれでも添い遂げるのか、「結末を決めつけることはせず、深く傷つくような体験を経て、運命を切り拓くヒロイン自らの手に、結末を委ねることに」したのであった。