『アラステア画集』のサロメ

 オスカー・ワイルド(Oscar Wilde)が亡くなったのは、1900年の11月30日(46歳)。つまり本日が命日。生田耕作・平田雅樹編『アラステア画集』(サバト館2000年12月)の挿画「オスカー・ワイルドの世界」をひさしぶりに堪能。わが所蔵の画集は、限定1350部中の1120番。なおアラステアの逝去は、1969年(82歳)のことである。
 アラステアは1887年、ドイツ南部のカールスルーエに生れた。1911年にプロイセ... : 「挿絵の黄金時代」と呼ばれた画家たちの作品まとめてみた - NAVER まとめ
サバト館:これが正しい版元名)




 巻末の平田雅樹氏の解説は詳細である。
……カール・ヴァン・ヴェクテンが『五十葉画集』序文のなかで、「……この芸術家の想像力と特殊な趣味性は、インスピレーションの原点となった素材を遥か超えた地点にまで彼を羽ばたかせてしまう。その結果、原作からの影響はその表題にうかがえれるのみ、完成した作品そのものは見るものを戸惑わせるまでに彼独自のものになってしまう。(中略)アラステアは、ヴェデキントを、ワイルドを、はたまたフローベルを、ただ彼の想像力を天空に飛翔させるための単なるきっかけとして利用しているのすぎないのだ」と述べているのは、実に的を射た指摘である。彼の描く人物たちは、小説の登場人物であると同時にアラステア自身の分身でもあるのであり、そこに描かれた被虐性も甘美な表情も、そして諧謔的モチーフでさえ彼の内面の象徴なのであって、それが持つ原作の性格から往々にして乖離していくのは、当然の帰結であった。したがって、アラステアの絵に現れた頽廃的美は、原作を反映しつつも、むしろこの天才の個人的資質というべきものである。頽廃の美は、言うまでもなく、文化が爛熟しそして腐敗する寸前のその一点にのみ存在する、まさに美の醍醐味、貴腐の芳香といえるものである。……( pp136~137 )
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20110227(「コンヴィチュニー演出の『サロメ』:2011年2/27 」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20111020/1319125488(「オペラ『サロメ』鑑賞:2011年10/20 」)
 http://d.hatena.ne.jp/simmel20/20120613/1339580706(「唇はゆりの花:多部未華子の『サロメ』観劇:2012年6/13 」)