中村真一郎は〈営業努力〉をしている

 作家の中村真一郎は、1997(平成9)年12/25に亡くなっているが、開成中学出身ということで、同窓会誌『開成会会報』第87号に、作家吉村昭とクラスメイトだった佐々木衛という方の追悼文が掲載されている。(同校後輩にあたる)吉村昭は、地方への講演旅行で中村真一郎と初めて出会い、その時の印象を述べている。…
……その旅の間、中村さんは上機嫌であった。日本橋で育っただけに、私などの下町弁とはちがって瀟洒な感じで、しかも多弁であった。話の内容が、創作でもしているのではないかと思うほど豊かで、多くの女性と愛し愛された話などが絶え間無く流れ出す。わたしは、話半分と思いながらも、きいているのが楽しくて笑いつづけた。中村さんの言葉は、音楽を耳にしているように快かった。……

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 比較文学者・作家の小谷野敦氏がブログで、「中村の若いころの写真はいまだ発見できないが、何だかけっこうもてたようなのは女が文学に幻想を抱けた時代だったからであろうか」と書いている。同級の親友だったそうな佐々木衛さんの追悼文を読むと、(想像するに)中村真一郎はモテ要素が多かったのだろうが、かなり熱心に〈営業努力〉もしていたようだ。その小説は一作たりとも読んでいないのだが、とにかく何もかも敵わない人である、とあらためてー。

中村真一郎君 追想(抜粋) 佐々木衛

 ❉  なお文中の「対象的」は「対照的」の誤記。

simmel20.hatenablog.com ❉この記事中の写真左が佐々木衛さんとのこと。