ベニサン・ピットから近泉ピットへ:今年最後の観劇



 昨日12/30(月)は、東京江東区新大橋の近泉(きんせん)ピットにて、tptプロデュースによる、トニー・クシュナー作(訳・台本=tpt workshops)、門井均演出の『ANGELS IN AMERICA』第1部を観てきた。今年最後の観劇ということになる。主としてゲイの人たちの愛と裏切り、挫折、魂の救済を主題に物語が展開。いくつかのプロットと人間関係がつながり、重層的な世界が作られていた。天使と先祖の亡霊も登場し、演劇の〈正統〉に連なっているのである。ただ、悲劇の発端にエイズという病があるところは、この病気が不治の病ではなくなった現代、入り込めない実感もあった。2時間30分の上演時間(途中休憩10分)が長く感じられなかったのであるから、一人一役ではない俳優らの熱演に拍手したい。(なお当日のハーパー役は、水口早苗。)音楽(ピアノ)は黒木佳奈、舞台の袖ですてきな音を聞かせつつ、バーのホステスも兼ねたりして面白かった。


 設えられた客席は、40ほどの席数。かつてのベニサン・ピットより規模が小さいかもしれない。しかしこの近泉ピットは、閉館となったベニサン・ピットと同じ町の江東区新大橋の、近泉合成繊維(本社は大阪府)の東京支店ビルの1Fの元作業場をtptが借り受けて小劇場としたもので、懐かしさとともに一演劇ファンとして期待も大きいのである。ただしこちらは閉所恐怖症気味で、自由席方式は困るところもあるのだが…。
東京新聞」2013年7/11朝刊紙上で「ベニサン第2幕」としてこの小劇場のことをとり上げていて、ベニサン・ピットについて『ドストエフスキーの長編を原作に、ポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダさんが演出した「ナスターシャ」は、坂東玉三郎さんの主演が話題を呼んだ』としている。この舞台は、ナスターシャ&ムイシュキン公爵坂東玉三郎、ラゴージンを辻萬長が演じている。ワイダは、ベニサン・ピットにたどりつき「ナスターシャを上演する場所はここしかない」と語ったそうである。近泉ピットでまた多くの思い出をつくりたいものである。