青春から〈老春〉へ—作家新美守弘


 文藝同人誌『風の道』第6号の恵贈にあずかった。創作の作品は、葉山修平氏の200頁の「処女出版ーそして室生犀星ー」を含めて5篇が発表されている。さっそく新美守弘氏の「記憶の絵」を読んでみる。作者の分身と思しき主人公の私のみずからの持病と、義父・義母など家族関係をめぐる軋轢とのたたかいの軌跡を叙述している。そしてさりげなく女との出会いと別れについても……。かつてこの作家の処女作品集『リルケの死』(菁柿堂)について、『関西文学』誌上に書評を載せたことがある。当時の印象としては、新美守弘さんは詩人肌の作家であり、また慶應大学大学院でドイツ文学を専攻した学究としての面も持ち合わせていた。
(拡大可 『関西文学』1984年11月号:『リルケの死』書評)
 こんなところが眼に留まったのも、同じ体験を共有したからであろうか。
……新しい人間関係の最たるものは長男の子の誕生であり、その母親であり、その家族である。それらは婚姻によるもので深い関係性のもとにある。特に私からすれば孫の存在は新たなる脅威である。この私を一気に祖父にしてしまったのだから脅威以外の何ものでもない。でもありがたい脅威ではあるのだが。その顔つきたるや堂々たるもので我々こちら側で待っている人々を睥睨しているようですらあった。とにかくはっきりした顔立ちの男の子だ。……
 読者であるわが家にも、8/3(土)〜8/5(月)福岡で暮らす長男夫婦が昨年10/13誕生の赤ちゃん(写真)を連れて訪れていたのである。「脅威」をこの作者とともに共有したことになる。
 今後作品世界がどう熟成していくのか見守ることとしたい。 

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のヒメ(姫)カラジウムカラジウム・フンボルティー(Caladium humboldtii)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆