文藝同人誌のこと

東京新聞」4/13夕刊の「文化」欄で、三重県鈴鹿市在住の文藝評論家、清水信氏のこれまでの仕事・履歴の紹介と、インタビュー記事が載っていた。92歳のいまも、雑誌や単行本を一日十冊ほど読むとのことである。『あまちゃん』の能年玲奈さん風に、じぇじぇじえじぇ!(4回) 
 とくに全国の文藝同人誌を半世紀以上にわたって読み批評をしつづけてきたとのこと、深甚なる敬意を表したい。励まされた書き手がいったい何人いたことだろう。「同人雑誌だけで活躍して、そのまま歴史の中に消えていった人が多いが、それらの人への愛着があって、どれも捨てがたい」と振り返るそうである。こちらも「そのまま歴史の中に消えていった人」になるだろうが、氏によれば、「同人雑誌は何でも自由に書けるのが強み」とのこと、電子書籍化をも視野に入れつつまた書く機会をもちたいものである。

 伝統ある文藝同人誌『凱:第三次GAI』35号を送っていただいている。今号は、女性ばかりが発表している。長谷良子さんの小説「その年の秋」は、20年前消費者金融からの融資の返済ができなくなって出奔、離婚手続きをとったかつての夫が実家の玄関先で亡くなっていて、すでに再婚している元妻の主人公が弔いの儀式に立ち会いつつ昔を回想する筋立て。題名が展開にしっくりしない印象であるが、人生のかなしみが漂い、好感をもった作品。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のシャクナゲ(石楠花)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆