赤ワインとポリフェノール

 
 居酒屋で、ポリフェノールが体にいいというので赤ワインばかり呑んでいる人がいる。赤ワインに含有されるプロアントシアニン(OPC)と呼ばれるポリフェノールがいいというわけである。フランス人は、動物性脂肪を多く摂取しているにも拘らず、心臓疾患で死亡する割合が同じ食文化の国々と比較して少ない事実、いわゆる「フレンチ・パラドックス」に着目した仮説を信じていることになる。この仮説の科学的信憑性については、門外漢にはまったくわからないが、ただどれだけ摂れば有効なのかとの、定量的考察が欠けているのは問題であろう。フランス人の肝臓疾患罹患率が高いこと、平均寿命(男性)は日本人より低いことなど考えると、赤ワインをむやみに呑んでいても、健康が守られるということではあるまい。
 フランスでのワイン消費量は減少傾向にあるのみならず、シーフードの消費の伸びとともに赤ワインに対しての白・ロゼワインの消費割合が増加しているのである。しかし平均寿命は伸びているのだ。むろん世代的な食文化の相違もあるだろうから、この統計的事実を健康の問題と直結させることは愚かではあるが。
 http://www.igakutogo.com/wine.html(「ポリフェノールもホドホドに!」)
 http://www.geocities.jp/m_kato_clinic/redwine-02-deception.html(「赤ワイン健康説のウソ」)
 http://memorva.jp/ranking/unfpa/who_2011_life_expectancy.php(「WHO世界平均寿命ランキング」)
 http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/0270.html(「世界のシーフード消費の推移」)
 赤ワインに含まれるレスベラトロール(resveratrol)というポリフェノールは、強い抗酸化作用があるそうで、2008年ハーバート大学のデイヴィッド・シンクレア博士と米国国立老化研究所のラファレル・デ・カボらによる肥満マウスを使った実験では、レスベラトロール投与によって、肥満原因の死亡例を31%減少させたとのこと。米山公啓医師によれば、これと同じ効果を人間に求めると、毎日ワインをボトル250本呑まなければならないそうだ。さらにガン予防ならば、動物実験での投与から計算して、グラスワイン1日あたり約780杯呑まないと有効な量にならないとのことである(米山公啓『腹7分目は病気にならない』PHP新書)。
 食卓に供された料理とのマリアージュ(marriage)を考えて、ワインは赤か白かなど選び、酒類全般(健康への有効性に)とくにこだわらず愉快に、もしくは絶望的に呑むのがよろしかろう、という結びとなる。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町に咲く、上シロハナズオウ(白花蘇芳)、下シャクヤク芍薬:品種レッドバロン)。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆