教育論には要注意

 
(学校時代、遅刻と忘れ物で拳骨を食らったと語る、女優貫地谷しほりさん) 
 広田照幸伊藤茂樹両教育学者共著の『教育問題はなぜまちがって語られるのか?』(日本図書センター)は、教育学への実践的入門書としてまとめられたようであるが、一般的に教育問題についてのリテラシーを身につける上で有益な本となっている。読み物としても面白く書かれている。教育を語ることは、自己の人生のあくまで個別的でしかない経験を美化・正当化するか、過去の怨念をぶちまけることに終始しかねない。広い視野で、情報の選別・判断による、能う限りたしかな事実認識に基づいて、しかも教育の力に万能薬的な過大な幻想をもたない姿勢で、現代の教育問題を考えるべきことを述べている。共感できる。教育問題をめぐってみずからの言説に偏りがあることじたいを否定するのではなく、自覚化相対化していく心構えと方法を説いていることにも好感がもてる。
……教育基本法が気にくわないとつねづね思ってきた人たちは、目の前の事件を教育基本法のせいにします。日頃、現代の家族のあり方を憂慮してきた人は、ここぞとばかり、家族のせいにします。つまり、何かを主張したい人たちが、好き勝手に、「原因」や「評価」を論じたてて、世間に流布させるのです。事件を取材したり報道したりする人たちも「これが原因ではないか」と自分たちが考えるものに焦点を合わせて材料を集め、ニュースにしていきます。第3章で触れた、「若者が職場で失敗するのは、ゆとり教育のせいだ」という珍説も、その一例ですね。……(p.146)
 教育問題に限らず、メディアの提供する情報にはバイアスがかかっているので、常に注意が必要である。昨今の「反原発」バイアスの情報操作は典型的である。
 http://d.hatena.ne.jp/hagex/20120404/p6(「千葉の放射能(脳?)デマ記事」)
 http://www.gepr.org/ja/contents/20120319-02/(「生活のための放射線講座」)

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家に咲く、上レンテンローズ(Lenten rose=春咲きクリスマスローズ:Helleborus orientalis)、下白木蓮。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆