事象ということば

 枝野官房長官の報告での「爆発の事象」ということばの使い方について、どこかのTwitterで、事故というべきところを、不適切なことばで曖昧にしているのではないかとの指摘を読んだ。
 その後のテレビの放送で、原子力発電所において生じるトラブルには、「国際事象評価尺度(INES:International Nuclear Event Scale)」なるものがあることが紹介されていて、合点がいった。三つの基準があり、深刻(重大)なものから、ACCIDENT(事故)、INCIDENT(異常な事象)、DEVIATION(尺度以下)とし、ACCIDENTには、7〜4のレベルがあり、INCIDENTには、3〜1のレベルがある。4が、所外への大きなリスクを伴わない事故(例:日本のJOC臨界事故)で、3が、重大な異常事象である。政府&担当者は、今回の福島原発トラブルを4に近いが、3のレベルと判断したようだ。
 したがって、ことばの使い方そのものは、判断の当否はともかく科学用語としては誤っていないといえる。ただ、「事象」ということばは、『広辞苑』ほか、「事物の現象」とされるから、「事故」ほどの切迫性に欠ける印象は否めない。ちなみに「INCIDENT」は、わが初心者むき『OXFORD Advanced Leaner's DICTIONARY』では、「an event or a happening & public disturbance,accident or violenceなど」とあり、『O-LEX』英和辞典では、「(偶発的な)事故」とあり、また「付随的な小さな出来事」ともある。やはり「事象」という語では、対応していない感じである。いっぽうで、本日の「東京新聞」の「原発爆発」なる大見出しは、プロレス新聞のそれを思わせ、感心しなかったことも記しておく。
⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町で春を告げるアセビ(馬酔木)の花。小川匡夫氏(全日写連)撮影。⦆