「ものづくり」との決別

 雑誌『The Lawyers(ザ・ローヤーズ August 2010)』(アイ・エル・エス出版)で、国際弁理士山本秀策氏が、日本の特許(知財)戦略の不備について論じている.日本の台頭で劣勢になった米国が、1979年「知的財産権の保護強化」の大方針を立て、以降日本は、住友製薬・東洋紡ミノルタカメラなど特許侵害の訴訟で敗訴し、事業の後退・消滅を余儀なくされた.また、アップル社は、新端末の電子部品を機能させるための入出力インターフェースおよびアンテナの特許をもっているため、「これら電子部品を国際分業で生産する各国企業は、頭脳部分を握っているアップル社の制御化にある」のだそうである。日本は大丈夫なのだろうか?

『米国は、研究・生産の主眼をハードからソフトに移行させた.ソフトウェアとマイクロプロセッサーさえ独自のものを手に入れれば、そのソフトの下に並ぶ電子部品などのアプリケーションは水平分業で労働コストの安い国で生産すればよく、かくして日本は韓国・台湾・中国などの新興勢力の台頭を許すこととなった.これらの国々の背後には、労働コストのさらに安いインドが、さらには、バングラディッシュスリランカが控えている.日本の「ものづくり」に将来はない.』(同書p.100)
 そこで氏は、「ものづくり」と決別し、「ソフトウェアやサービスに特化した基礎研究に全力投球すべき」で、「サイエンスレベルの高いインパクトのある発明を生み出すことを期すべきだ」と提言している.いずれにしろ産業構造の転換が求められているということだろう.

⦅写真(解像度20%)は、東京台東区下町民家のベゴニアの花。小川匡夫氏(全日写連)撮影.⦆